2014年5月23日 読売 社説「大飯再稼働訴訟」「不合理な推論が導く否定判決」

「最高裁の判例の趣旨に反する福井地裁判決」
読売の社説に「大飯再稼働訴訟」「不合理な推論が導く否定判決」が書かれている。

「『ゼロリスク』に囚われた、あまりに不合理な判決である。定期検査のため停止している関西電力大飯原子力発電所3、4号機について、福井地裁が運転再開の差し止めを命じる判決を言い渡した。原発の周辺住民らの訴えを認めたものだ。

判決は、関電側が主張している大飯原発の安全対策について、『確たる根拠のない楽観的な見通しのもとに成り立ち得る脆弱なもの』との見方を示し、具体的な危険があると判断した。

『福島第一原発の事故原因が確定できていない』ため、関電は、トラブル時に事態把握や適切な対応策がとれないことは『明らか』とも一方的に断じた。

昨年7月に施行された原発の新たな規制基準を無視し、科学的知見にも乏しい。判決が、どれほどの規模の地震が起きるかは『仮説』であり、いくら大きな地震を想定しても、それを『超える地震が来ないという確たる根拠はない』と強調した点も、理解しがたい。

非現実的な考え方に基づけば、安全対策も講じようがない。大飯原発は、福島第一原発事故を受けて国内の全原発が停止した後、当時の野田首相の政治判断で2012年7月に再稼働した。順調に運転し、昨年9月からは定期検査に入っている。関電は規制委に対し、大飯原発3、4号機が新規制基準に適合しているかどうかの審査を申請している。規制委は、敷地内の活断層の存在も否定しており、審査は大詰めに差し掛かっている。

別の住民グループが同様に再稼働の差し止めを求めた仮処分の即時抗告審では、大阪高裁が9日、申し立てを却下した。

規制委の安全審査が続いていることを考慮し、『その結論の前に裁判所が差し止めの必要性を認めるのは相当ではない』という理由からだ。常識的な判断である。

最高裁は1992年の伊方原発の安全審査を巡る訴訟の判決で、『極めて高度で最新の科学的、技術的、総合的な判断が必要で、行政側の合理的な判断に委ねられている』との見解を示している。

原発の審査に関し、司法の役割は抑制的であるべきだ、とした妥当な判決だった。各地で起こされた原発関連訴訟の判決には、最高裁の考え方が反映されてきた。福井地裁判決が最高裁の判例の趣旨に反するのは明らかである。関電は控訴する方針だ。上級審には合理的な判断を求めたい」。

社説の結語である「福井地裁判決が最高裁の判例の趣旨に反するのは明らかである。関電は控訴する方針だ。上級審には合理的な判断を求めたい」は、正論である。

最高裁は1992年の伊方原発の安全審査を巡る訴訟の判決で「極めて高度で最新の科学的、技術的、総合的判断が必要で、行政側の合理的な判断に委ねられている」との見解を示している。原発の審査に関し、司法の役割は抑制的であるべきだとの判決である。

にもかかわらず、福井地裁の判決は、どれほどの規模の地震が起きるかは「仮説」であり、いくら大きな地震を想定しても、それを「超える地震が来ないという確たる根拠はない」との非現実的、非科学的な推論に基づくものであり、規制委の安全審査を全く無視している。誤った判決と言わざるを得ない。事実、9日、別の住民グループが同様に再稼働の差し止めを求めた仮処分の即時抗告審では、大阪高裁が申し立を却下している。理由は、規制委の安全審査が続いていることを考慮し、「その結論の前に裁判所が差し止めの必要性を認めるのは相当ではない」。最高裁の判例の趣旨に沿った合意的判決である。

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