2013年11月06日
日経の「権力の鍵」に「婚外子民法改正、滞る審査」「保守系議員、立ち塞がる」が書かれている。
「『了承は簡単じゃない。もっと知恵を出さないとダメだ』。10月初め、自民党法務部会長の大塚拓は、民法改正案の事前審査をせかす法務省官房長、黒川弘務をこう突き放した。嫌な予感がしたからだ。
改正案は最高裁判所の決定を踏まえ、結婚していない男女間の子(婚外子)の遺産相続分を法律上の夫婦の子(嫡出子)の半分とする民法の規定を削除し、区別をなくす内容。法務省は10月中の閣議決定、国会提出を規定したが、自民党の事前審査が滞る。『家族制度を否定する』と保守系議員が反発したのだ。
『政調会長直属の特命委員会を設け、家族制度を守る政策を立案する』。10月29日の法務部会。大塚は民法改正案の事前審査を決着させる切り札を示した。だが、効果はなかった。
松下政経塾出身の赤池誠章は『最高裁が何でもかんでも違憲判断していいのか』と反発。自衛官から同じく松下政経塾を経て国政入りした宇都隆史は『目の前の混乱を回避するために国の根幹を壊していいのか』と続いた。文部科学副大臣の西川京子も『法改正は婚姻制度の否定だ』と強調。西田昌司は『間違った憲法判断は、国権の最高機関である立法府が否定しないとならない』と説いた。
同じ日の夕方開かれた保守系議員による超党派議員連盟『創生<日本>』の総会には宇都や西川の姿があった。議連会長は首相、安倍晋三。保守系議員には『安倍政権を誕生させたのは伝統的価値観を重視する保守層だ』との思いと、政権を支えている自負がある。衆院選公約は『日本の家族の絆を守る』。民法改正は『公約ほご』に思える。
各部会を統括する政調会長の高市早苗も保守系。10月24日、記者会見で『違憲とされた条文を放置すると世の中に混乱が起こる』と民法改正はやむをえないとの認識を示した。ただし、最高裁決定を『個人的な主張とは相いれない』と付け加えるのも忘れなかった。
衆参両院のねじれ解消で与党の賛成だけで法案は成立する。ただそれに伴って事前審査という自民党のシステムが復活し、党部会が法案の命運を左右するようになった。今国会の民法改正が早期に実現するかも、安倍と、安倍を支える保守系議員のさじ加減一つだ」。
最高裁判決を踏まえての「『婚外子』民法改正」が、自民党の事前審査での保守系議員の抵抗で、今国会での成立が危ぶまれている。「家族制度」を否定すると反発しているが、主客転倒である。「婚外子民法改正」阻止しても「家族制度」崩壊はとまらないからである。民意の過半数以上が、最高裁判決を支持し、民法改正に賛成している。保守系議員は、自制すべきである。