2013年11月05日

「この地域は住めない」
朝日に「『全員帰還』堅持か転換か」「政権、福島の反応を見極め」が書かれている。

「東京電力福島第一原発事故で避難している被災者について、石破茂・自民党幹事長が希望者全員の帰還という政府方針の見直しを求め、避難先からの帰還をめぐる議論が本格的に進みそうだ。ただ、地元首長の受け止めは一様ではない。『被災地切り捨て』と批判されかねないだけに、安倍政権は地元や与党の議論を見極めつつ対応策を検討する構えだ。

石破氏は2日、札幌市の講演で、住民が帰還できない地域を明示すべきだと明言した。伏線は10月30日にあった。自民党復興加速化本部が提言をまとめるのを前に大島理森本部長が党役員に提言案を報告。その際、石破氏は『リスクコミュニケーションが大事だ』と述べ、帰還の見通しを含めて避難者に説明が必要だと指摘していた。

政府の基本方針は『希望する人は全員帰還できるようにするのが目標』(復興庁幹部)。一方、政権内では、帰還困難区域を念頭に『現実的に考えれば、当面帰還は無理だ』(政府関係者)との考えも根強い。石破氏の発言は安倍晋三首相や菅義偉官房長官と打ち合わせたものではないが、首相側近は『誰が言い出すか、という話』とも語る。

ただ、被災地の反応を考えると、『政府の口から<ここは住めない>なんて言えない』(閣僚の一人)。自民党の提言も『全員帰還』の額面は保っており、与党の足元からは『<帰れない>と打ち出すのはまだ早すぎる』(福島選出の自民党国会議員)という声が出る。

政権は近く首相が提言を受け取り復興加速化策の検討に入る。与党の議論を発端にしたうえで地元の意向を受けるという形で、検討を進めたい考えだ。政権幹部は『もう帰らないで避難先に住みたいという人も出てくる。そういう整理は地元にしてもらった方がいい』と語る。ただ、検討内容は対象地域や期間、支援内容など多岐にわたるとみられ、検討に入っても結論がいつ出るかは不透明だ。

<「やっぱり」「突然言うのか」異なる地域事情、首長賛否>
地域のほとんどが帰還困難区域に指定されている町は『自治体消滅』の危機にもさらされる。福島第一原発が立地し、町民96%が住んでいた地域が帰還困難区域に指定されている福島県双葉町。伊沢史朗町長は石破氏発言に疑問を持ち、帰還へのこだわりを見せる。『我々は無理でも次の世代が戻れることを見据えないといけない。住めないと言うにしても何年住めないか示してほしい』。

全町民約1万6千人が県内外に避難する富岡町。町民の3割が住んでいた地域が帰還困難区域に指定されている。宮本皓一町長が、石破氏発言を『複雑な思いがする』と語った。『<全町民で帰りたい>と、かすかな希望を持っていたが、それがかなわない残念な思い。現実をみると<やっぱりな>とも思う』。再編後も狭い仮設住宅での暮らしや、家族が分断された避難生活に変わりはない。町長自身、避難者から『帰れないのなら帰れないと言ってくれ』と迫られることがあるという。

町の8割が帰還困難区域に指定されている浪江町の馬場有町長は、政府・与党の対応を不安視する。『幹事長が突然、<帰れないところもでる>と言い出す。住民にきちんとした説明がされるのか』。

『帰還困難区域でも帰りたい人がいるし、放射線量が低い地域でも帰らない人もいる。単純に線引きできない』。飯館村の菅野典雄村長は、帰還困難区域を一律に帰還不能区域に変更しかねない考えに反対だ」。

石破幹事長が、2日、札幌市の講演で、「この地域は住めない、というべき時期来る」と発言したが、正論である。年間50ミリシーベルト超で12年3月から5年以上戻れない帰還困難区域、浪江町、双葉町、大熊町,富岡町の対象住民約2万5千人が対象となる。年間20ミリシーベルト以下になるのに、数十年以上かかるからである。

問題は、いつ、誰が言うか、である。今、安倍首相が言うべきである。福島復興が、遅々として進まないのは、除染の遅れで、住民が帰還できないことにある。除染地域の選択と集中が必須となる。年間50ミリシーベルト超の帰還困難区域は除外せざるを得ない。「被災地切り捨て」との批判を浴びても、安倍首相は、決断すべきである。

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