時は令和。
世界は戦争、分断による確執が表明化し紛争が絶えない。
東西対立から世界は旧宗主国連合からなる先進国とそれまで搾取の対象であった資源保有国，途上国との新しい対立軸に移行した時代である。
この物語はユーラシア大陸の東端に位置する小さな島国での出来事である。
この島国は大陸間の海上にあり地政学的にも大国同士の緩衝地帯としての役割りを担い、その重要性から世界の恩恵を受け経済的発展を遂げてきた。

しかし、80年続く支配体制は御多分にもれず、長く続く間に制度疲労を起こし，さまざまな腐敗，利権を生み出した。
その特権を世襲するまでになると国民の不満は頂点に達しつつあった。
そんな時にこの島国に「国を取り戻す」のスローガンを掲げた宰相が生まれた。
「三本の矢」「一億総活躍」などの力強い言葉のもと、長期の政権維持がなされた。
外交的にも若い宗主国であった宰相と非常に良好な関係を築いた。
世界的な貢献もこの小さな島国は成していた。

しかしその安定政権が倒れ、同時に宗主国側でも関係の良かったトップが世界統一国家を目指す全体主義的宰相に移行した。
島国は一方的に利用され植民地化は加速した。

そこにこの若い宗主国とは対抗しようとする歴史だけは古い宗主国があらゆる手段、金，女、利権、脅しなど、さまざまな形で島国の統治者たちを籠絡していった。
また，それに応えるように統治者たちはあらゆる便宜を覇権国家を目指す国に対し提供、国民生活は困窮していった。

そしてとうとう植民地から真の独立を目指す元宰相を暗殺するに至り、国民の中から異変を嗅ぎ取る者たちが現れ始めた。

きっかけはSNSであった。
新聞，テレビというメディアの真実の報道とされるものに疑問を持ち始めたことにあった。
その動きは若き宗主国でも同じ。
SNSによってリアルタイムで真実が伝えられるようになると、元々，自由な国であることを標榜する若き宗主国は全体主義的な政権を選挙で倒すこととなった。

一方の歴史だけは古い新たな宗主国は、あらゆるメディアを制限，統制することに力を注ぐことを選んだ。
しかし，制限，統制が非常に難しいことに直面する。
結果，政府の発表するあらゆる情報，統計などがまったく信用されない状況に、かの政府は陥っている。
このような時代に極東の島国に歴史を揺るがす女帝が生まれることになった。