2014年12月22日 日経「迫真」「巨大与党、再び3」に「かしずく霞が関」

日経の「迫真」「巨大与党、再び3」に「かしずく霞が関」が書かれている。

「衆院選での自民党勝利の余韻さめやらぬ16日、財務相の麻生太郎(74)は事務次官の香川俊介(58)、主税局長の佐藤慎一(58)を連れて首相官邸を訪ねた。差し出したのは2015年度税制改正原案。首相の安倍晋三(60)がこだわる法人実効税率の引き下げでは税収に穴があく『先行減税』に踏み込み早々と了承を取り付けた。

『総理に納得してもらいながら進めることが肝心だ』。安倍の意向に寄り添い現実的な解を示してこそ初めて財務省の言い分にも耳を貸してもらえる。アベノミクスのブレーキ役とみられた財務省の変化がみえる。

『財務省のみなさんも善意ではあるんですが、すごい勢いで根回しをしてますから党内全体がその雰囲気になっていて……』。選挙公示前の11月30日、安倍はテレビ番組で消費再増税の延期に反対した財務省の動きに不快感をにじませた。

復興特別法人税の廃止前倒し、法人減税、消費再増税の延期。財務省は12年の第2次安倍政権誕生以来、多くの局面で安倍の意向に異を唱えたが成果は芳しくない。安倍の意向を覆そうとしても逆効果になりかねない。長期政権が確実になったいま『政権をひっくり返してでも消費増税を実現したい財務省』(経済官庁幹部)との評価が広がらないよう腐心する。

安倍の成長重視路線を支えてきた筆頭省庁との意識が強い経済産業省は財務省の動きに気が気でない。首相秘書官に安倍の信認が厚い今井尚哉(56)ら2人を送り込んできたが『税制改正や経済対策で財務省が総理の意向に従えばやはり財務省が大事となる』と経産省幹部は漏らす。『来年6月の成長戦略に向けたタマ込めを始めろ』。経産省ではこんな指令が飛ぶ。

官邸が求心力を増す背景には人事もある。省庁の幹部人事は今年から内閣人事局に一元化され、官僚の出世は官邸のさじ加減一つで決まるようになった。第1次安倍政権で首相秘書官を務めた財務省の田中一穂主計局長(59)は異例の『同期3人目の次官』になるのが確実とされるが、官邸との距離感を間違えればどの省庁幹部も命取りだ。

野党の混迷が続くなか、霞が関まで『物言えば唇寒し』と及び腰になり政策の選択肢を示す役割を怠れば政権運営は危うさが増す。『すべて官邸のいいなりになるつもりはない』。ある省庁の幹部は漏らすがその顔色はさえない」。

再増税1年半先送りとなり、安倍首相に完敗した財務省は、法人実効税率の引き下げでも税収に穴があく「先行減税」を容認し、恭順の意を示した。問題は、財務省の政権をひっくり返してでも消費増税をとの野心は健在であることだ。内閣支持率が急落すれば牙をむくのは必至である。

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