2014年11月23日 読売 田中隆之・政治部長が「アベノミクスが否か」
「政権選択選挙」
読売に田中隆之・政治部長が「アベノミクスが否か」を書いている。
「自民党が圧勝した2012年の衆院選から2年足らずの解散だ。いかにも早いようにみえる。だが、大事なのは、前回選挙から間を空けることではない。問うべき争点があるかどうかだ。
景気は回復しつつあるが、力強さに欠け、更なる消費増税で失速しかねない。安倍首相は、増税先送りを決め、内閣の最重要課題である経済政策について、国民の判断を仰ぐ。『アベノミクス解散』と位置づける首相の考えは理解できる。
集団的自衛権の限定行使の容認や、原発の再稼働、環太平洋経済連携協定(TPP)への参加にも首相は取り組んでいる。いずれも世論の賛否は割れている。選挙で勝てば、こうした政策の正当性が増すのは間違いない。
過去、衆院選の見送りを後悔した元首相がいた。安倍氏の祖父岸信介氏だ。1960年、日米安全保障条約の改定案をまとめた岸氏は解散を検討したが、周囲の反対で断念した。安保は改定されたが、国民的な安保反対運動の盛り上がりで岸氏は退陣した。
後年、『総選挙をやっておけば、あの後の安保騒動はなかったと思う』(「岸信介証言録」中公文庫)と岸氏は語った。『幻の衆院選』での審判があれば、日米安保をめぐる国論の混乱は防げたのかもしれない。
近年でも、野田前首相は社会保障・税一体改革関連法を成立させたが、解散時期を引き延ばした揚げ句、民主党は惨敗した。麻生元首相も、解散先送りを図ったが、自民党の党勢は回復せず政権から転落した。
重要な政策に今後も取り組もうとするなら、国民に信を問うことにちゅうちょしてはならない。今回、野党第1党の民主党は、政権交代を前面に掲げていない。首相に対する『中間選挙』になりそうな気配だ。野党各党は『これまでの経済政策では危うい』(民主党の海江田代表)、『自民党では本当の改革ができない』(維新の党の江田共同代表)と批判する。具体的な代案で有権者に選択肢を示す必要がある。
この数年、短命政権が続いたが、自民党『1強』の下で政治は安定を取り戻しつつある。このまま首相の政策、政治手法を支持するのか、それとも違う道を取るよう迫るのか。有権者に判断の機会が与えられた。まさに衆院選にふさわしい争点である」。
衆院選とは、政権選択選挙がその要諦であり、大義である。「大義なき解散」は、ないのである。解散・総選挙の大義は、いつでも政権選択選挙となる。
問題は、野党第1党は常在戦場であり、常に政権選択選挙となる解散・総選挙に備え、政権担当能力を十全に保持しなければならない責務がある。民主党は、下野から1年11カ月たつのに、明らかに準備不足である。295小選挙区での候補擁立が160人前後にとどまり、アベノミクスへの対案が用意できていないからである。
民意は、民主党を政権の受け皿に足ると認知できないのである。つまり、民主党政権への選択肢がないのである。民意は、唯一の選択肢である安倍政権・自公政権を選択することになるのは、必然である。与党の圧勝、民主党の惨敗となるが。民意は、民主党政権3年と安倍政権2年を比較して、投票行動を決めるからである。