2014年5月14日 日経社説 「経常黒字縮小が映し出す日本経済の課題」
「投資先として魅力的な国に」
日経の社説に「経常黒字縮小が映し出す日本経済の課題」が書かれている。
「経常収支はモノやサービス、カネなど海外との総合的な取引状況を示す指標だ。日本の2013年度の経常収支は7899億円の黒字で、いまの統計で比較できる1985年度以降で最小となった。
輸出から輸入を差し引いた貿易収支の赤字額が、過去最大にふくらんだのが主な原因だ。原子力発電所の稼働停止で液化天然ガス(LNG)などの輸入が大きく増えるなか、輸出が伸び悩んだ。海外投資に伴う利子・配当所得などを表す第1次所得収支の黒字額は過去最大で、貿易赤字を穴埋めして経常黒字を保った。
そもそも経常黒字の縮小や、経常赤字そのものが悪いわけではない。米国や英国、オーストラリアなどは経常赤字が常態となっているものの、日本より経済成長率が高い期間が長い。
13年度に日本の輸入が大幅に増えたのは、景気回復で個人消費などの内需が強かったからでもある。90年代後半以降のデフレの下で内需が振るわなかった結果としての経常黒字は、必ずしも良い経常黒字だったといえないだろう。
要するに、単純に経常黒字か赤字か、または黒字額の大小だけで一喜一憂すべきではない。大事なことは、指標が映し出す日本経済の構造変化や課題にきちんと目を向けることだ。
まず円安にもかかわらず輸出が伸び悩んだ点で、日本企業の輸出競争力が低下していないか心配だ。経済のグローバル化のなかで企業が海外生産を増やす流れは変わらない。一方で国内で付加価値の高い先端製品をつくる工場や、研究開発拠点の力を磨けば、輸出を増やす余地はまだあるはずだ。
財政との関係も重要だ。日本の財政状態は先進国で最悪だ。過去に金融市場で国債や通貨が大きく売られた国の大半は、財政赤字と経常赤字が併存する『双子の赤字』だった。国としての信認を維持するためにも、財政の立て直しは欠かせない。長い目でみれば、日本の高齢化はさらに進む。特に団塊世代が75歳以上の後期高齢者に入る2020年代になると、家計全体では貯蓄を取り崩す局面に入り、経常赤字が定着しやすくなる。
その時に日本が、外国からみて投資先として魅力的な国となっているかが問われる。法人実効税率の引き下げ、規制改革などによる対日直接投資の拡大、成長力の強化が必要な理由でもある」。
結語である「その時に日本が、外国からみて投資先として魅力的な国となっているかが、問われる。法人実効税率の引き下げ、規制改革などによる対日直接投資の拡大、成長力の強化が必要な理由でもある」は、正論である。2013年度の経常収支は7899億円の黒字となったが、1985年以降で最小となった。
問題は、日本経済の構造が変化したことである。円安にも関わらず輸出が伸びないことである。長期の円高で、企業が生産拠点を海外に移転したからである。この流れは円安になっても変わらない。どうすべきか、逆に海外企業を召致すべきとなる。対日直接投資の拡大のために、法人実効税率の引き下げ、国家戦略特区での規制改革が急務となる。