2014年3月9日 朝日 社説「中国の国防費」「危うい軍拡を止めよ」
「尖閣有事」
朝日の社説に「中国の国防費」「危うい軍拡を止めよ」が書かれている。
「中国の軍拡が止まらない。ことしの国防予算は昨年に比べて12・2%増えた。日本円にして13・4兆円にのぼる。日本の防衛予算の実に3倍近い。きのう始まった中国の全国人民代表大会(国会に相当)で報告された。財政支出の全体の伸びは9・5%だから、国防費の伸びは抜きんでている。
最近だけではない。89年以来、10年を除いてずっと2けた台の伸びだった。経済成長はベースを落としても、軍備は増強が加速している。
この頑強な軍拡のねらいは一体、何なのか。世界が強い懸念を抱くのは当たり前だ。李克強首相は『国防科学技術研究とハイテク武器装備の発展に力を入れる』と述べた。『海洋強国づくりに力を入れ」というのも気にかかる発言だ。
一昨年、空母『遼寧』が就役し、2隻目として初の国産空母を建造中と伝えられる。核戦力も増強し、米大陸に届く長射程の大陸間弾道ミサイルの配備を進め、宇宙、サイバーへも手を広げている。
発表分だけでも巨額だが、外国からの装備購入や研究開発費は別枠とされる。国際的に批判され続ける中国軍の不透明さは本質的に変わっていない。周辺国が警戒する理由は、兵器のハード面にとどまらない。軍の強引な振る舞いが国の姿に色濃い影を落としている。
昨秋、習近平国家主席は『周辺国との善隣友好関係を発展させる』と明言した。だが、ほどなく中国軍は東シナ海に不穏当な防空識別圏を設けた。
李首相のインド訪問直前だった昨春にはカシミールの国境未確定地帯で、中国軍部隊が侵入して居座る事件もあった。責任ある大国としての地位を築きたいならば、近隣のアジア各国に理解され、信頼される必要がある。
まるで前世紀初頭までのような強兵政策にひた走り、力による覇権を唱えるかのような姿は国際的な尊敬に値しない。
核を含む国防政策と軍事費の情報を開示するのは、国連安保理常任理事国で、核保有を認められた国としての最低限の責務である。中国政府は説明責任を果たすべきだ。
米国政府も、4年ごとに更新する軍事戦略を発表した。中国の軍拡を強く意識し、20年までに海軍艦船の6割をアジア太平洋地域に配置する。
軍拡が軍拡を呼ぶ悪循環の末路は人類の戦争史が物語る。過ちを繰り返さないためには何が必要か。各国指導者は今こそ真剣に考えねばならない」。
「最近だけではない。89年以来、10年を除いてずっと2ケタ台の伸びだった。経済成長はペースを落としても、軍備は増強が加速している。この頑強な軍拡の狙いは一体なのか。世界が強い懸念を抱くのは当たり前だ」は、正論である。
中国の全人代で報告された中国の国防予算は、昨年に比べ2・2%増え、日本円にして13・4兆円に上り、日本の防衛予算の3倍に近い。中国軍事費の総額は表に出ている国防費の2倍以上と言われるから、実質日本の防衛予算の6倍になる。
問題は,止まらない軍拡の狙いである。アジア・太平洋の覇権確保である。東シナ海、南シナ海の海上覇権制圧である。肝心なのは、そこに尖閣諸島占有が含まれることである。「尖閣有事」なのである。「尖閣有事」に対して、集団的自衛権行使容認が不可避となる。