日経「米大統領、国内外を意識」「チベット人権保護支持」「ダライ・ラマと会談、中国けん制の思惑も」

日経に「米大統領、国内外を意識」「チベット人権保護支持」「ダライ・ラマと会談、中国けん制の思惑も」が書かれている。

「オバマ米大統領は21日、チベット仏教最高指導者のダライ・ラマ14世と会談し、チベットの人権保護を強く支持すると表明した。中国の反発を承知で会談した背景には、人権を重視する米国の姿勢を改めて内外に示す狙いがある。イランや北朝鮮の核問題などで欠かせない中国との協力も、人権重視の原則を曲げてしまえば国内外の理解を得られないと判断した。

『米政府はチベットを中国の一部と認める。独立は支持しない』。カーニー米大統領報道官は同日の記者会見で、ダライ・ラマ14世をチベット独立派とみなして会談に反発する中国を意識した回答をした。会談場所も私的な面会用のマップルーム(地図の間)で「非公式」を演出した。中国の反対を意識しつつ、オバマ氏がダライ・ラマ14世と会談したのは、会談しなかった時のリスクを懸念した側面が大きい。

一つは米国内。人権への対応は与野党を問わず、厳しい視線にさらされる。オバマ氏は中国訪問を控えた2009年、ダライ・ラマ14世との会談を見送り、米議会の批判を浴びた。今回、ダライ・ラマ14世は米国に3週間程度、滞在し、オバマ氏との会談を求めていたとされる。断った場合『中国への配慮』から人権を置き去りにしたとみられ、再び米議会から反発を招くのは必至だ。

もう一つは国外。米国はシリアのアサド政権による市民の大量虐殺を『人権上の問題』と批判し、即時退陣を要求している。最近、治安部隊と反政府デモ隊が衝突したウクライナ情勢でも『人権上の問題』から治安部隊の撤収を求めた。人権の扱いを問題視される中国だけを『例外』にすることは、国際社会での米国の信用をおとしめることにつながる。

対中国関係の視点もある。中国側は米中で世界を仕切る『新たな形の大国関係』を提唱。オバマ政権内でも、それに理解を示す幹部がいるが、それが中国の増長を招いたとの見方だ。米シンクタンク、AEI研究所のゲーリー・シュミット研究員は『米国は中国との新たな関係を築こうと努力したが中国は米国が弱気になったとみて南シナ海や東シナ海で一段と攻撃的になった』と指摘する。

オバマ氏がダライ・ラマ14世との会談を通じて中国へのけん制効果を見込んだとの考え方だ。中国の出方が今後の焦点になる。米側には3月下旬にオランダ・ハーグで予定する米中首脳会談を中国側が拒否してきても『苦しくなるのは、米中関係を訴えたかった中国側だ』といった突き放した意見もある」。

オバマ大統領が中国の反発を承知でダライ・ラマ14世と会談したのは、中国へのけん制の狙いがある。「新たな形の大国関係」より「人権重視」を強調したからである。今後の中国の出方が要注目となる。

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