2014年2月25日 読売 社説「日米互いにカードを切るべきだ」「TPP閣僚会合」

「自由化率原則100%」
読売の社説に「日米互いにカードを切るべきだ」「TPP閣僚会合」が書かれている。

「環太平洋経済連携協定(TPP)交渉が大筋合意できるかどうか、大きなヤマ場を迎えた。膠着状態を打開するため、今度こそ、交渉を主導する日本と米国の歩み寄りを求めたい。

日米、豪州など12か国によるTPP交渉の閣僚会合が22日、シンガポールで始まった。昨年12月に合意を見送って以来、約2か月ぶりの仕切り直し交渉である。TPPは、高い自由化率の新貿易圏をアジア太平洋地域で創設するという野心的な試みだ。

TPPをテコにアジアの活力を取り込めば、日本の成長戦略に弾みがつくと期待される。雇用と輸出拡大を狙うオバマ米政権も、TPP重視を掲げてきた。しかし、昨年末に合意できなかったのは、日米の対立が交渉全体の足を引っ張ったためだ。

TPPは原則、関税撤廃がルールだが、自民党はコメ、麦など農産品5項目を『聖域』として死守するよう主張している。あくまで関税撤廃を求める米国と日本の主張の隔たりは大きい。

閣僚会合前、甘利TPP相がフロマン米通商代表と会談したほか、日米協議も東京で行われた。甘利氏が『互いにカードを切る』と意気込んだのは、着地点を探りたい決意の表れだろう。

日本は5項目のうち、牛肉や豚肉の関税率引き下げなどを打診した模様だが、米国はまだ不十分として一層の自由化を求めている。今のところ、日米協議が決着する見通しはたっていない。

関税分類上、5項目は586品目に及ぶ。日本は何を守り、何を譲るか。輸入実績がない品目や影響が軽微なものを中心に、現実的な市場開放策を検討し、交渉の突破口を開いてもらいたい。

日本が自動車関税の撤廃時期明示や部品関税撤廃を求めている点では、国内業界の意向を受けて米国が抵抗し、平行線が続く。米大統領に通商交渉権を与える貿易促進法案は議会で成立していない。議会の支持を集めて法案成立を目指そうと、オバマ政権がTPP交渉で強硬姿勢を堅持せざるを得ない事情もうかがえる。

シンガポールでは、多国間と日米など2国間の交渉が並行して行われる。知的財産権や競争政策分野でも、米国とマレーシアなど新興国との対立が根深い。

日米対立が続けば、他の難航分野の打開も厳しいだろう。TPPで新たな貿易・投資ルールを作り、世界貿易をリードする道を日米がつぶしてはならない」。

社説の結語である「日米対立が続けば、他の難航分野の打開も厳しいだろう。TPPで新たな貿易・投資ルールを作り、世界貿易をリードする道を日米が潰してはならない」は、正論である。TPP交渉妥結は、日米協議決着にかかっている。

問題は、日本の農産品5項目死守の自由化率93%という交渉姿勢である。TPPの原則である関税撤廃、自由化率100%のルール違反であるからだ。限りなく100%にする交渉姿勢が不可欠なのである。最低でも自由化率98%が求められる。5項目のうちコメ、砂糖を除いて関税撤廃となる。農協、農林族の抵抗必至となる。農業構造改革をやり抜くために、安倍首相の政治決断が不可避となる。総選挙は16年ダブル選までないのだから、決断は可能となるが。

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