2023年4月3日 FRBの限界

アメリカ連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の記者会見に出た質問はシリコンバレーバンク及びシグネチャーバンクの経営破綻を事前に防ぐ手立ての有無とアメリカの金融システム全体に拡がる懸念であった。インフレ抑制を急ぐあまり金利優先され金融機関の監督部分はおろそかになっていたのではとの指摘である。

一連の指摘にパウエル議長はシリコンバレーバンクに於いては(アウトライヤー)であると答えている。アウトライヤーとは統計用語に使われ一定の測定値トレンドから外れる極端な値の意味である。規定外と理解しろとの事なのか。確かに保有資産リスクが高い銀行をアウトライヤー銀行とも金融関係では表現している。シリコンバレーバンクは預金保険制度外の預金が9割近くあり、利上げ局面での資産管理のずさんが指摘されている。

パウエル議長の発言では、これらの銀行は規定外であるので、銀行側の経営上の失態と言いたいのあろう。最近のアメリカ上院議会でも利上げペースを0.25幅から再び0.5幅に加速する発言をしている。そんな中FRB内の協議では内部調査を含め見直しを指摘、パウエル議長自身も「シリコンバレーバンクの一連の事態はFRBによる徹底的で透明性のある迅速な調査が必要」との声明も出している。

FRBによるこれらの判断は日本にも大きく影響する。先進国で唯一緩和を継続している日銀の新総裁に就任する植田氏は、先の会見で緩和策の副作用も指摘している。4月に新体制で開催される金融政策決定会合で緩和修正が予想されているが、アメリカの利上げ鈍化と日銀の緩和修正のタイミングが合ってしまえば日米金利差が縮小して、今度は急速な円高要因にもなりかねない。輸出関連企業は大きな影響を受ける事になる。

イギリス中央銀行のイングランド銀行(BOE)は政策金利を0.25%引き上げ、4.25%との発表があった。インフレ抑制を優先した政策だ。スイスの中央銀行にあたるスイス国立銀行も政策金利を0.5%引き上げ、1.5%とするとの発表。クレディスイスグループの経営不振なども意識しての対応であろう。金融システム不安とFRBの舵取りにより日銀は判断を迫られるであろうが、どちらを選択してもリスクを伴い難しい判断である。

pagetop