2021年9月19日 「河野氏33%、石破氏16% 次の自民総裁、ふさわしいのは」「朝日新聞社世論調査」
朝日新聞社は11、12日に全国世論調査(電話)を実施した。自民党総裁選が17日に告示されるのを前に、新総裁にだれ がふさわしいか聞いたところ、河野太郎行政改革相が33%と最多で、石破茂元幹事長が 16%、岸田文雄前政調会長が14%、高市早苗前総務相が8%、野田聖子幹事長代行が 3%だった。▼3面=議員票焦点、4面=質問と回答 次の首相を事実上選ぶ総裁選に立候補を表明、あるいは検討している5氏の名前を挙げ、 選んでもらった。「この中にはいない」と答えた人は20%だった。
支持政党別に見ると、自民支持層では河野氏が42%で、岸田氏19%、石破氏13%、 高市氏12%、野田氏1%だった。無党派層では、河野氏28%、石破氏17%、岸田氏 11%と続き、高市氏6%、野田氏5%だった。
次の首相は安倍晋三前首相や菅義偉首相の路線を引き継ぐ方がよいかどうか尋ねたとこ ろ、『引き継ぐ方がよい』は28%で、『引き継がない方がよい』は倍以上の58%を占 めた。自民支持層でも『引き継ぐ方がよい』44%と『引き継がない方がよい』43%が 拮抗(きっこう)した。総裁選では、自民党の国会議員票への影響力が大きい安倍氏の支 援に期待する言動もみられるが、世論は冷ややかな視線を向けているともいえそうだ。
退陣することになる菅内閣の支持率は30%(前回8月調査は28%)と横ばいだった。 ただし、政党支持率を見ると、自民は今回、37%(同32%)。菅政権下では、昨年1 2月調査の38%に次ぐ水準まで回復し、立憲民主の5%(同6%)との差を広げた。『仮 に今、投票するとしたら』として聞いた衆院選比例区投票先は、自民は43%(同35%)。 こちらも昨年11月の45%に次ぎ、立憲の11%(同15%)を引き離した。総裁選の 動きが自民を押し上げ、立憲を埋没させたとみられる。
≪次期首相に必要、「実行力」が64%≫
11、12日に実施した朝日新聞社の全国世論調査で、次の首相に最も必要なものを4 択で選んでもらったところ、『実行力』が64%を占め、『誠実さ』15%、『発信力』 10%、『政治信条』7%が続いた。
『実行力』『発信力』を選んだ人では、その4割が、次の自民党総裁にふさわしい人とし て河野太郎行政改革相を挙げた。『誠実さ』を選んだ人の支持は石破茂元幹事長25%、 河野氏20%、岸田文雄前政調会長18%、『政治信条』を選んだ人の支持は河野氏20%、 高市早苗前総務相19%、岸田氏17%の順だった。
次の首相には、経済成長を図る政策と、格差を是正する政策のどちらに重点を置いてほ しいか聞いたところ、『経済成長』43%、『格差是正』41%と拮抗(きっこう)した。
次の首相は『脱原発』を『進めるべきだ』は48%で、『その必要はない』は40%。 森友・加計学園問題や桜を見る会などの問題解明を『進めるべきだ』は47%で、『その 必要はない』45%とほぼ並んだ。
これらの課題を巡っては、自民支持層と無党派層で傾向が異なる。自民支持層では『経 済成長』が6割に迫るが、『無党派層』では『格差是正』がやや多かった。森友問題など の解明も、自民支持層は『進めるべきだ』は3割強だが、無党派層は5割と多数だった。
総裁選候補者が総裁選を勝ち抜くには自民支持層へのアピールは欠かせないが、迫る衆院 選では51%を占める無党派層に浸透を図る必要もあり、難しいかじ取りを迫られそうだ。
<制限緩和「賛成」51%>
新型コロナウイルスの緊急事態宣言が出ている地域でも、ワクチン証明書などがある人 には、行動制限を緩めるという政府の案について聞いた。『賛成』は51%と半数を超え たが、『反対』も41%を占めた。男性の賛成は58%で、反対の37%を上回ったが、 女性は賛成45%と反対46%が並んだ。
コロナに感染した場合、必要な治療を受けられない不安についても聞いたところ、『大 いに』38%と『ある程度』44%を合わせた『感じる』が82%に達した。『感じない』 は『あまり』13%、『全く』4%を合わせて17%だった。
【本社世論調査 質問と回答】
(数字は%。小数点以下は四捨五入。質問文と回答は一部省略。丸カッコ内の数字は、 8月7、8日の調査結果)
◆菅内閣を支持しますか。 支持する30(28)▽支持しない51(53)
◆今、どの政党を支持していますか。政党名でお答えください。 自民37(32)▽立 憲5(6)▽公明3(2)▽共産3(3)▽維新1(1)▽国民0(1)▽社民0(0) ▽NHK党0(0)▽希望0(0)▽れいわ0(0)▽その他の政党0(0)▽支持する 政党はない43(47)▽答えない・分からない8(8)
◆仮に今、衆議院選挙の投票をするとしたら、比例区ではどの政党に投票したいと思いま すか。(択一) 自民43(35)▽立憲11(15)▽公明6(5)▽共産6(6)▽ 維新6(7)▽国民2(3)▽社民1(0)▽NHK党0(1)▽希望0(0)▽れいわ 1(1)▽その他の政党2(1)▽答えない・分からない22(26)
◆自民党総裁選が17日に告示されます。新しく選ばれる自民党総裁は事実上、次の首相 になります。次の自民党総裁には誰がふさわしいと思いますか。(択一) 石破茂さん1 6▽岸田文雄さん14▽河野太郎さん33▽高市早苗さん8▽野田聖子さん3▽この中に はいない20
◆次の首相に最も必要なものは何だと思いますか。(択一) 発信力10▽誠実さ15▽ 政治信条7▽実行力64
◆次の首相は、前の首相の安倍さんや菅さんの路線を引き継ぐ方がよいと思いますか。 引 き継ぐ方がよい28▽引き継がない方がよい58
◆次の首相には、日本経済の成長を図る政策と、格差を是正する政策のどちらに重点を置 いてほしいですか。 経済成長を図る43▽格差を是正する41
◆次の首相は、「脱原発」を進めるべきだと思いますか。その必要はないと思いますか。 進めるべきだ48▽その必要はない40
◆次の首相は、森友・加計学園問題や桜を見る会などの問題の解明を進めるべきだと思い ますか。その必要はないと思いますか。 進めるべきだ47▽その必要はない45
◆今度の衆院選で投票する政党や候補者を決めるとき、党の代表がだれなのかを、どの程 度重視しますか。(択一) 大いに重視する18▽ある程度重視する47▽あまり重視し ない23▽全く重視しない9
◆第2次安倍政権以降の約9年間の自民党と公明党の政権は、全体としてよかったと思い ますか。 よかった49▽よくなかった40
◆今度の衆院選で、自民党と公明党の与党が、議席を増やした方がよいと思いますか。野 党が議席を増やした方がよいと思いますか。与党と野党の議席は、今とあまり変わらない ままがよいと思いますか。 与党が増やした方がよい19(15)▽野党が増やした方が よい36(37)▽今とあまり変わらないままがよい36(34)
◆新型コロナウイルスを巡るこれまでの政府の対応を評価しますか。 評価する37(2 3)▽評価しない54(66)
◆政府は、緊急事態宣言が出ている地域でもワクチン証明書などがある人には、11月ご ろをめどに飲食、イベント、旅行の行動制限を緩める案を出しました。この案に賛成です か。 賛成51▽反対41
◆新型コロナウイルスに感染した場合、必要な治療を受けられない不安をどの程度感じま すか。(択一) 大いに感じる38▽ある程度感じる44▽あまり感じない13▽全く感 じない4
<調査方法> コンピューターで無作為に電話番号を作成し、固定電話と携帯電話に調 査員が電話をかけるRDD方式で、11、12の両日に全国の有権者を対象に調査した。 固定は有権者がいると判明した1042世帯から575人(回答率55%)、携帯は有権 者につながった2027件のうち902人(同44%)、計1477人の有効回答を得た。
以上の調査結果から次のことが読み解ける。
内閣支持率は前回調査(8月7,8日)より2ポイント増の30%、不支持率は2ポイ ント減の51%と微増となったが、自民党の政党支持率は5ポイント増の37%、次期衆 院選の比例投票先は8ポイント増の43%と急伸した。9月3日,菅義偉首相が総裁選不 出馬を表明し、自民党総裁選が17日告示、29日投開票で、フルスベックで行われ国民 の関心を集めたからである。菅義偉首相の身を退いた戦略が奏功したからである。誰が総 理総裁になろうとも、ご祝儀相場で、60%前後の内閣支持率と40%以上の自民支持率 で衆院選に臨み、現有議席276議席マイナス30議席を一掃し、プラス20議席も可能 となった。与党の支持率は、自民37%+公明3%=40%に対して、野党共闘は、立憲 5%+共産3%+国民0%+社民0%+れいわ0%=8%しかない。5分の1である。次 期衆院選の投票先では、与党が自民43%;公明6%=49%に対して、野党共闘は立憲 11%+共産6%+国民2%+社民1%+れいわ1%=21%しかない。289の1人区 で与党の圧勝となる。
問題は、総裁選でだれが勝つのか、である。自民支持層では河野氏42%、岸田氏19%、 石破氏13%、高市氏12%、野田氏5%となっている。地方票383を比例配分すると。 河野氏160、岸田氏72,石破氏50,高市氏46、野田氏19。石破氏不出馬で河野氏と連携すると単純計算で219となり、地方票の56%をとることになる。全体の過半 数は323だから、議員票で114を確保すれば、1回目で過半数に届くが。課題は、3つある。第1は石破票が50票そのまま乗ることはなく、地方票の50%は難しいとなる。 第2は、河野・石破連合が安倍・麻生氏を中心とする派閥の締め付けが始まり、横断派閥 の若手が切り崩される。第3に、河野・石破連合の既得権益打破は、参院議員票100票か岸田氏か、高市氏に回る。結果、第1回投票で河野氏は1位にはなるが、過半数は取れず、決戦投票で、2位、3位の岸田・高市連合に敗れるとなる。安倍・麻生氏の思惑通りとなるが。河野総理・石破幹事長阻止が至上命題だからである。8年半の安倍路線継続のために、である。