2021年8月15日 コロナの5類相当への引き下げを

「政府が、新型コロナウイルス感染者の入院対象を、重症者と重症化リスクの高い人に限
定することを決めた。自宅療養が原則となる中等症患者でも、容体急変の可能性はある。救
える命を守ることができるのか、不安は尽きない。
中等症患者はこれまで入院の対象とされてきたが、政府の方針転換により、重症化のリ
スクが低いと判断されれば、軽症者同様、自宅での療養が原則となる。
緊急事態宣言が発令されている東京都では、自宅療養と入院待ちなどの人が二万二千人
を超える。政府の方針転換は、重症者用に病床を確保するためとしている。
いつでも、誰にでも、必要な医療を提供する体制を整えることが政府の責務のはずだ。そ
の原則を覆す重大な方針転換である。菅義偉首相は国民に対して丁寧に説明する責任を果
たしてはいない。
首相のこれまでの説明は、ワクチン接種の進展や高齢者の新規感染者数の減少、新たな
治療薬の登場など楽観的なものが目立つ。
しかし、専門家からは急激な感染拡大による医療逼迫(ひっぱく)が懸念されていた。感
染力の強いデルタ株の拡大も周知の事実だ。首相の見通しは甘かった。五輪開催を優先し
たと指摘されても仕方がない。
新型コロナは容体が急変する場合がある。関西圏では以前「第四波」の際、入院先が見つ
からず自宅で亡くなる事例が相次いだ。
患者が必要な医療を受けられず置き去りにされることは許されない。野党は四日行われ
た国会の閉会中審査などで政府に方針撤回を迫った。与党・公明党も撤回を含む再検討を
求めている。首相をはじめ政府は重く受け止めるべきだ。
入院が必要か否かは各自治体が判断する。治療の優先順位づけを現場に委ねることにな
るが、政府はその基準を早急に示す必要があるのではないか。
自宅で療養する患者には、きめ細かい健康観察が必要だが、それを担うべき保健所は急
激な感染拡大で手いっぱいだ。特に、患者が一人暮らしの場合、容体急変の不安は想像に難
くない。
自宅療養者は地域の開業医の往診や訪問看護などで支えたいが、医療従事者同士の連携
は手薄のままだ。自治体や地域の医師会が主体的に体制を整えるべきだ。
病床確保を進めつつ、これ以上の感染拡大を抑え込むことで、救える命を確実に救いた
い」。

 
社説の主旨である「救える命守れるのか」に異論がある。

 
政府は、新型コロナウィルス感染者の入院対象を、重症者と重症化リスクの高い人に限
定することを決めたが、自民党、公明党の反対によって軌道修正し、中等症患者も入院対象
に加えた。軽症患者は自宅療養との原則である。政府の方針転換は重症者用の病床を確保
するためであるが、これまでの原則はコロナ感染者は全員入院が原則であったからだ。そ
の理由は、コロナウィルスは致死率が20%近くあり、2類相当として保健所管理に置か
れていたからである。しかし、ワクチン接種の加速によって、現在の致死率は0・2%台ま
で急減している。米国・英国・EUでも0・2%~0・6%まで低下している。約0・1%
の致死率のインフレエンザに近づいており、米国・英国・EUで5類(インフルエンザ並
み)に引き下げられている。

 
問題は、政府の今回の措置は、5類引き下げに準じるものであることだ。厚生省の抵抗
を、官邸主導で押し切った形となった。自宅療養・宿泊療養を診療所、日本医師会の支援体
制でケアを、である。日本医師会の民間病院の2割しか感染者受け入れをしていないから
である。中小病院故である。インフルエンザと同じく、保健所を介さずに、医師が診療、診
断できる形となる。その自宅療養に「抗体カクテル療法」を活用すれば、90%以上の治癒
が可能となる。「救える命を守るため」に入院制限は、正論となるが。

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