2019年6月28日 日経に「イラン攻撃撤回 再選影響懸念か」「トランプ氏に『弱腰』批判も」

日経に「イラン攻撃撤回 再選影響懸念か」「トランプ氏に『弱腰』批判も」が書かれている。

「トランプ米大統領が20日、イランへの軍事行動を土壇場で撤回した。ボルトン大統領補佐官(国家安全保障担当)ら強硬派が唱える主戦論に一時は傾いたが、戦線が拡大すれば米国経済に打撃となり、再選をめざす2020年11月の大統領選にも影響しかねないと判断したとみられる。ただ、圧力を強めてイランを対話に誘い出す戦略にはほころびがみえつつある。

イランによる米軍の無人機撃墜から一夜明けた米東部時間の20日。米紙ワシントン・ポストによると、トランプ氏は同日朝に空爆にゴーサインを出し、犠牲者も最大150人になるとの報告を受けた。空爆はイランが日の出前の米東部時間午後9~10時の間に予定されていた。その直前、トランプ氏はホワイトハウスの大統領執務室に政権高官を参集し、『何人くらい死ぬのか』などと改めて尋ねた。会合が終わると、攻撃撤回を命じたという。

土壇場の変心の理由は何か。米紙ニューヨーク・タイムズによると、トランプ氏は最近、自らに近い保守系FOXテレビのキャスターから『イランの挑発に乗るのは狂気の沙汰だ』と伝えられていた。

『イランとの戦争に巻き込まれれば、大統領再選に影響する』と助言され、軍事行動を求めるタカ派とは最終局面で距離を置いた。中東で戦線が広がれば、トランプ氏が成果として誇る米国の景気への打撃も免れなくなる。

イランとの軍事衝突は、『米国第一主義』を掲げて中東の米軍撤退を表明してきたトランプ氏の基本戦略とも相容れない。周囲の慎重派のこんな見方も、トランプ氏が軍事行動を踏みとどまった判断に影響を与えた可能性があると米メディアは伝える。

『私は戦争を望んでいない。もしそうなれば、見たこともない破壊を目の当たりにする』。トランプ氏は21日収録の米NBCテレビのインタビューでこう語った。中東有数の軍事大国であるイランとの戦争に短期勝利はあり得ない。トランプ氏にとって、実行寸前の攻撃撤回はイランに米国の本気度を示すとともに、対話に前向きなサインを送る効果がある。

ただ、与党・共和党の保守派議員からは『<攻撃する>と言いながら実行しないのは、オバマ前政権そのものだ』(マイク・ギャラガー下院議員)など、トランプ氏への『弱腰批判』がわき起こる。北朝鮮と同様に『最大限の圧力』で対話に追い込むのがトランプ氏の戦略だが、イランは最高指導者ハメネイ師が対話を拒否している。トランプ氏の描くシナリオは袋小路に陥りつつある。

<欧州自ら仲介役を> マサ・ルーヒ英国際戦略研究所(IISS)リサーチ・フェロー

多くの異なった要因がからみあい、イランを巡る情勢が不安定さを増している。米国、イランともに戦争に発展することは望まないと強調している。だが、互いの意図の誤解や計算間違いで、突発的な事態を招くリスクは高い。

両国とも戦争を回避するための外交努力が重要だ。その際(イラン核合意の枠組みにとどまる)欧州が果たす役割が重要になる。自ら仲介役となり米国とイランにとって越えてはならない一線を見いだすべきだ。

<「150人犠牲」抑止力に>ポール・イングラム英米セキュリティー情報協議会専務理事

トランプ米大統領が対イランの軍事作戦で150人の犠牲者が見込まれたと公言したことは、同国への抑止力として機能する。米国に挑発行動をとれば、極めて危険な事態を招くとのメッセージになったからだ。

ただトランプ氏が(直前で攻撃を撤回するなど)軍事行動に慎重なことも明らかになった。軍事攻撃をちらつかせて取引に持ち込む戦略は、今後機能しにくくなる。仮に米国が空爆に踏み切ればイランから報復行為を受けるリスクはとても高い。

<報復で周辺国に影響>  田中浩一郎・慶大教授

米国が仮にイランの核施設や弾道ミサイルの関連施設への攻撃などで報復措置を取った場合、周辺地域にも大きな影響がでるだろう。イランは中東周辺国の米国企業や、米国の同盟国のアラブ首長国連邦(UAE)やサウジアラビアにある米軍基地などを攻撃する可能性がある。米イラン情勢は1980年の国交断絶から40年近く対立が続いており、関係改善に向かうのは難しい状況にある。欧州などの関係各国が間に入ることで両国の軍事衝突は防げるかもしれないが、根本的な問題解決にはならない」。

トランプ米大統領が20日、イランへの軍事行動を10分前に撤回したが、再選への影響を懸念したからである。イランとの戦争は長期化し、中東全域に拡大するからである。ボルトン大統領補佐官らの主戦論を抑えたのは、正解である。

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