2019年6月28日 日経の社説に「強硬離脱なら英経済は岐路に立たされる」
「国民投票の再実施によるEU残留が解」
日経の社説に「強硬離脱なら英経済は岐路に立たされる」が書かれている。
「欧州連合(EU)からの離脱の是非を問い、僅差で離脱票が多数を占めた2016年6月の英国の国民投票から、3年が経過した。
投票直後に就任したメイ首相は『円滑な離脱の実現』を掲げたが、EU側と合意した離脱協定案の承認を議会で得られず、混乱がなお続いている。
自らの国益を損なうだけでなく国際経済・社会の不安材料にもなっている事態を英政界は直視し、真摯に打開策を探るべきだ。
求心力を失って来月退陣するメイ首相の後任を選ぶ与党保守党の党首選は、20日の議員投票を経てジョンソン前外相とハント外相が対決する構図となった。
決選投票には約16万人の一般党員も参加し、7月下旬に次の首相となる新党首が決まる。事前の予想では、対EU強硬派のジョンソン氏が穏健派のハント氏を大きくリードしている。
既に2度延長した離脱期限は10月末に迫る。メイ氏が持ち帰った協定案は修正可能だとジョンソン氏は主張するが、修正の焦点は英領北アイルランドとアイルランド共和国(EU)の国境問題だ。
歴史的にも宗教面でも複雑な問題だけに、EU側は修正を断固拒否している。ならばEUからの『合意なき離脱』も辞さない、というジョンソン氏の姿勢には、憂慮を覚えざるをえない。
反EUの支持層にアピールして首相に就いたとしても、ジョンソン氏の政権基盤は盤石ではない。議会下院では与野党の議席が拮抗しており、首相不信任案が成立して総選挙の前倒しというシナリオさえありうる。政府・与党の迷走を傍観してきた野党の労働党も事態の深刻度を踏まえ、ブレア元首相らが求めてきた国民投票の再実施を検討し始めた。
EU内外からの移民の大量流入に英国民の反発は根強い。一方、関税ゼロで人材の移動に制限のない欧州単一市場に背を向ければ、残留する場合に比べ英国の国内総生産(GDP)が落ち込むのは避けがたい現実である。
進出企業は合意なき離脱に突入するリスクへの備えを加速している。大手邦銀は金融街のロンドン・シティーを補完できる機能をドイツやオランダに確保した。
製造業も関税の復活や通関の混乱に備えたサプライチェーンの再構築を探る。欧州屈指の金融サービスと製造業の拠点である英国経済は、岐路に立たされている」。
社説の主旨である「強硬離脱なら英経済は岐路に立たされる」は正論である。
欧州連合からの離脱の是非を問い、僅差で離脱票が多数を占めた2016年6月の英国国民投票から3年が経過したが、投票直後に就任したメイ首相は求心力を失って7月退陣し、7月下旬には次の首相が決まる。事前の予想では対EU強硬派のジョンソン氏が穏健派のハント氏を大きくリードして有力である。
問題は、既に2度延長した離脱期限が10月末に迫っていることであり、対EU強硬派のジョンソン氏は「合意なき離脱」を目論んでいることである。「合意なき離脱」となれば、欧州屈指の金融サービスと製造の拠点である英国経済は岐路に立たされるのは必至となる。課題は、ジョンソン氏の政権基盤が盤石でなく、議会下院では与野党の議席が拮抗しており、首相不信任案が成立して、総選挙の前倒しというシナリオもあり、野党の労働党も国民投票の再実施を検討し始めている。英国経済復活のカギは、EU残流が筋となる。関税ゼロで人材の移動に制限のない欧州単一市場に背を向ければ、英国のGDPの落ち込みは必至だからである。国民投票の再実施によるEU残留が解となるが。