2019年6月19日 産経の「正論」に、百地章・日大名誉教授が「女性天皇ではなく旧宮家の男子を」
産経の「正論」に、百地章・日大名誉教授が「女性天皇ではなく旧宮家の男子を」書いている。
「御代替わり後、初めての国賓であるトランプ米国大統領夫妻を迎えられた天皇、皇后両陛下の堂々たるお姿とお心配りを拝して、深い感銘と敬意を覚えた国民は少なくあるまい。
お子さまに対する評判も良く、愛子天皇待望論も目につくようになった。
<愛子天皇誕生は女系容認の道>
『皇統』は男系であり、10代8方の女性天皇もすべて『男系』だ。それ故、男系である『愛子天皇』ならありえよう。しかし女性天皇はいずれもご在位中は配偶者を持たず、未婚か未亡人であった。しかも一時的例外的存在であった。果たして、そのような厳しい条件を付けてまで愛子天皇を実現すべきか。『ご在位中は未婚のままで』などといえば、それこそ『人権無視』の非難が沸き起こるだろう。また男子の皇位継承権者がおられるのだから、敢えて女性天皇を実現する必然性はない。
国会は平成29年6月、全会一致で『退位特例法』を制定し、次の天皇は皇嗣秋篠宮殿下であることを決定した。また皇室典範は改正しなかったから、その次は悠仁親王ということになる。
にもかかわらず、同じ国会がわずか2年しかたたない内にその決定を覆し、『愛子天皇』を実現させることなどあり得まい。それ以上の難問は、『愛子天皇』の誕生は女系天皇の容認につながる恐れがあることだ。もしご在位中に民間人と結婚されお子さまが誕生すれば、『女系皇族』さらに『女系天皇』につながる可能性がある。そうなれば、先に本欄で述べたように(「皇位の安定的継承は男系が前提」2月4日)、『皇室の伝統』を破壊するだけではなく、憲法違反の疑いさえ出てくる。
<女系論者の意図的旧宮家隠し>
最近の各種世論調査では、女性・女系天皇支持の国民は7割前後ある。その大きな理由の一つは、女性・女系天皇推進論者たちの妙な『旧宮家』隠しにあると思われる。
平成17年、わずか10カ月17回の会合だけで『女性宮家』『女系天皇』容認の結論を下した政府の有識者会議報告書は次のようにいう。『旧皇族は既に60年近く一般国民として過ごしており、今上天皇との共通の祖先は約600年前の室町時代までさかのぼる遠い血筋の方々』だから国民が受け入れるはずがない。
こう述べただけで、旧宮家を対象外とした。その後、女系容認論者たちが常套句として用いたのがこの『600年前に分家』と『60年も民間人』であった。
こうして、旧宮家を排除した上で現在の皇室だけ眺めれば、女性宮家や女系天皇もやむなしと国民が考えても不思議はなかろう。
<旧宮家と皇室は緊密な関係に>
しかし、旧宮家や皇室との緊密な関係を詳しく説明すれば、『男系』を維持し『皇位の安定的継承を確保す』」最適な方法があることを国民は理解するはずである。
先の敗戦と連合国による占領下に『皇籍離脱』を強制された旧11宮家の方々は、いずれも伏見宮家の家系に属する。伏見宮家は室町時代の初め、北朝・崇高天皇の第一皇子、栄仁親王によって創設された600年以上の歴史を誇る宮家である。そして歴代当主は、その時々の天皇の猶子(名目的養子)として親王に任ぜられ、常に皇位継承権を有した。
第4代の彦仁王は称光天皇の猶子として第102代後花園天皇となられ(現皇室もその血を引く)、幕末にも第19代貞敬親王が天皇の候補に挙げられたことがある。それ故、皇室と伏見宮家は常に密接な関係を保ってきたことが分かるし、現行憲法下でも昭和22年10月まで皇族として皇位継承権を有した。
また、旧宮家の方々は皇籍離脱後も皇室と密接な交流があり、当主を中心とした菊栄親睦会や皇室の慶弔時を通じて緊密な関係を保っている。
血筋からいっても現皇室と旧宮家の方々の多くは親戚関係にあり、若い男子が8人もいる。例えば、明治と昭和の両天皇の内親王が嫁された東久邇家の当主は天皇陛下と従兄弟に当たり、久邇家の当主と上皇陛下も従兄弟関係にある。その東久邇家には悠仁親王と同年代のお孫さんが4人、久邇家にも10歳未満のお孫さんが1人おられる。また竹田家には明治天皇の内親王が嫁されているが、同家にも10歳未満のお子さんが1人、賀陽家も久邇家から分かれてできた家だが、20歳代前半の方が2人おられる。
しかも、男系維持の受容性を強く自覚している方々も少なくないと聞くし、その確証もある。
それ故、皇室典範特例法によって若いふさわしい方を皇族に迎え、将来、いくつかの宮家の当主となっていただけば、悠仁天皇を支える盤石な体制ができよう。
5月21日のBSフジ『プライムニュース』で、衛藤晟一首相補佐官が『旧宮家を』と発言したところ、野田佳彦前首相は『リアリティー』がないと応じたが、十分現実味はあるのではなかろうか」。
百地氏の言う「女性天皇ではなく旧宮家の男子を」は正論である。皇室の伝統である男系維持を死守するために、である。国民世論調査では、女性・女系天皇支持は7割前後あり、愛子天皇支持は同じく7割前後となるが、愛子天皇誕生は女系天皇容認となり、皇室の伝統を破壊することになる。問題は、旧宮家には若い男子が8人もいることである。皇室典範特例法によってその8人の何人かを皇族に迎え、宮家の当主となれば、悠仁天皇を支える基盤となり、皇統の伝統を維持できるが。