2018年12月1日 産経「世界の裏舞台」に、佐藤優氏が「2島返還プラスアルファ」

産経の「世界の裏舞台」に、佐藤優氏が「2島返還プラスアルファ」を書いている。

北方領土交渉が動き始めた。

『安倍晋三首相は14日夜、ロシアのプーチン大統領と訪問先のシンガポールで会談し、今後3年以内に日露両国が平和条約を締結することで合意した。また来年1月にも首相が訪露し、プーチン氏との会談で詰めの協議を行うことも決めた。両首脳が事実上、期限を区切って日露平和条約を結ぶこと決めたことで、戦後70年以上、解決の道筋がつけられなかった北方領土問題は大きな転換点を迎えた。
首相は会談後、記者団に<戦後70年以上残されてきた課題を次の世代に先送りされることなく、私とプーチン氏の手で必ずや終止符を打つという強い意志を完全に共有した>と語った』(15日の産経新聞)。安倍首相の力強い意気込みが伝わってくる。

『首相は会談後、<1955年の日ソ共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることで合意した>と強調した。日ソ共同宣言は平和条約交渉締結後に、北方四島のうち、歯舞群島と色丹島を日本に引き渡すと明記している。ただ、政府高官によると、首相は会談で北方4島の帰属の問題を解決し、平和条約を締結するという日本政府方針を改めて説明し、プーチン氏も理解を示したという』(同上)

対外的に政府は四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結するという基本的立場に変更はないと説明している。四島の帰属の問題を論理的に考えると、5通り(日4露0、日3露1、日2露2、日1露3、日0露4)の場合がある。安倍首相とプーチン大統領が『1956年の日ソ共同宣言を基礎に条約締結交渉を加速させることで合意した』ということを素直に読んでみよう。共同宣言9項後段には『ソビエト社会主義共和国連邦は、日本国の要望に応えかつ日本の利益を考慮して、歯舞群島及び色丹島を日本国に引き渡すことに同意する。ただし、これらの諸島は、日本国とソビエト社会主義共和国連邦との間に平和条約が締結された後に現実に引き渡されるものとする』と記されている。

歯舞群島と色丹島は日本の主権下にあることを確認し、日露間に国境線を画定するという方向性で両首脳は今後、平和条約交渉を進めていくと思う。

国境線が画定されることと領土問題の解決は同じ意味だ。これで日露間の戦後処理が完全に終わる。政府は北方領土がロシアによって不法占拠されているという法的解釈を変更する。

歯舞群島と色丹島は日本領になるのであるから、日本人が往来、居住し、経済活動や文化活動を行うことができる。国後島と択捉島はロシアの主権下で、経済活動などについて日本に特別の地位を認める制度を作ることができる。特別の条約を結んでもいい。これで2島返還プラスアルファが実現する。国後島と択捉島に日本人が進出し、島の日本化を進めることで、将来、ロシアとの合意によりこれら2島を日本領とする可能性も閉ざされていない」。

コラムの主旨である「2島返還プラスアルファ」は、は、正鵠を突いている。1956年の日ソ共同宣言を基礎として平和条約交渉を加速させることで合意したとの意味がそれである。国策である4島返還路線からの大転換である。国民に信を問わざるを得ない。7月のダブル選必至となるが。

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