2017年4月20日 読売「補助線」小田尚・論説主幹「森友政局に幕引けるか」
読売の「補助線」に小田尚・論説主幹が「森友政局に幕引けるか」を書いている。
「学校法人『森友学園』への国有地の格安売却問題が、あたかも安倍政権の一大不祥事のように、国会で取り上げられている。
問題の本質は、大阪府豊中市の国有地が昨年6月、評価額を大幅に下回る価格で小学校開設用地として森友学園に払い下げられたことに、正当な理由と政治家の関与があったかどうかである。
その国有地は、不動産鑑定の評価額が9億5600万円だった。売却額の1億3400万円とは、8億円以上の差がある。その裏に何があったのか。
常識的には、国有地払い下げの手続きに国会議員が介在することはない。秘書も含めて、そんな危ない橋は渡らないものだ。
国会論戦でも当事者で『政治的関与があったのだろう』との認識を示したのは、森友学園の籠池泰典理事長(当時)しかいない。
3月23日の参院予算委員会で行われた証人喚問で、小学校認可や国有地売却を巡って、自ら働きかけたとして、自民党参院議員ら4氏の名前を挙げた。だが、具体的な根拠に欠けるうえ、4氏は不当な関与を否定している。
財務省も反論に出ている。当時の武内良樹・近畿財務局長は、翌24日の参院予算委で、参考人として、『政治家及び秘書などから問い合わせはなく、政治的配慮は一切していない』と明言した。
財務省は、地中からコンクリート片や廃材が見つかったため、その撤去費用分を評価額から差し引いただけだ、と説明する。
算定根拠について、国土交通省は『地下9・9メートルまで廃材などが存在する、と見積もるのは合理的だ』と主張する。
減額に不当性はないという。だが、その行政判断に必要な関係書類は廃棄されている。森友学園はそこまでゴミを撤去せずに小学校を建設しようとしていた。
一部に釈然としないところもあるが、口利きが『ない』ことを立証するのは『悪魔の証明』にほかならない。これ以上、国有地売却の真相を究明するなら、司直の手にゆだねるしかあるまい。
民進党など野党は、この小学校の名誉校長に安倍昭恵・首相夫人が就任予定だったこと、森友学園の幼稚園で教育勅語を暗唱させていることなど、枝葉の話も絡めてくる。安倍政権のイメージダウンに利用できると踏んだからだ。
結果的にこの問題を拡大し、政局化したのは、2月17日の衆院予算委員会での首相答弁だった。
『私や妻は、小学校認可や国有地払い下げに、一切関わっていない。関わっていたら、首相も国会議員も辞める』
自らの進退と結びつけ、きっぱり否定することで、問題に区切りをつけるつもりが、かえって野党を刺激し、昭恵氏の『関わり』探しに走らせることになる。
『私は公人だが、妻は私人だ』という首相の3月1日の参院予算委での発言も尾を引く。公人に法的規定はない。政府は答弁書で首相夫人を『私人』と決定したが、昭恵氏には政府職員が5人も付いている。
『公人』の首相の活動を補助する『私人』の首相夫人をサポートする『公人』が夫人付職員という入り組んだ説明になっている。
首相夫人付職員がクローズアップされたのは、籠池氏側が国有地の定期借地契約をより有利にしようと、依頼状を郵送したためだ。職員は財務省に問い合わせ、『現状では希望に沿えない』との回答を籠池氏にファクスしていた。
夫人付職員の照会は、財務官僚の忖度を促す恐れがある。野党は24日の参院予算委で、昭恵氏が職員を通じて財務省に働きかけたのではないか、と追及した。
首相は『事務的な問い合わせであり、働きかけ、不当な圧力ではない』と述べ、昭恵氏の関与を全面的に否定している。
職員の一連の対応を、政府側は『公務ではない』と強弁する。
夫人付職員が、昭恵氏の森友学園での講演だけでなく、参院選応援、米真珠湾訪問、スキー旅行に同行したことも分かった。私人の私的行為に公人が派遣されたことになる。ここは整理が必要だろうが、本筋の話ではない。
結局、森友問題は、政局の要素を除けば、籠池氏が小学校建設の工事契約額をごまかして、国交省の補助金を不正受給したとの疑惑が主なのではないか。
大阪地検特捜部場補助金適正化法違反の疑いがあるとの告発を受理し、捜査に入っている。大山鳴動して何とやらとなるのかどうか、予断を許さない」。
「森友政局」は幕引きである。朝鮮半島有事の危機に、安倍首相夫人の証人喚問を要求する野党4党の政治音痴ぶりに国民があきれ果ているからである。安倍降ろしに狂奔している場合か、である。