2016年10月12日 朝日「2016米大統領選」に「トランプ氏、四面楚歌」
朝日の「2016米大統領選」に「トランプ氏、四面楚歌」が書かれている。
「米大統領選の共和党候補トランプ氏(70)による『わいせつ会話』問題が、同氏の選挙戦を大きく揺さぶっている。党大会で正式に指名されたにもかかわらず、党内から公然と不支持を突きつけられ、『四面楚歌』状態だ。しかし、不支持勢力にとっても候補差し替えの術があるわけではない。投票日が迫るなか、党の結束も瓦解しつつある。
≪「党結束の日」に分断露呈≫
投票日でも1カ月となる8日は本来、共和党の『結束』を演出する日だったが、一転『分断』を露呈する日に変わってしまった。
多くの暴言を吐き、排外主義的な政策を掲げるトランプ氏に対し、共和党内には不満が根強くあった。このため、ライアン下院議長は、自身の地元ウィスコンシン州で集会を8日に企画。トランプ氏と初めて壇上で並び、『党の団結』を印象づける戦略だった。
だが、前日に『わいせつ会話』が明るみに出て、ライアン氏は『発言にうんざりしている』と声明を出し、トランプ氏の招待を取り消した。米メディアによると、8日の集会でライアン氏は『厄介な状況になった』などと釈明したが、トランプ支持者からブーイングを浴びる始末となった。
また、大統領選と同時に実施される上下両院議員選挙を控えた共和党議員は、トランプ支持者ら有権者の意向などを気にして、これまでトランプ氏への批判を抑制。だが、トランプ氏への逆風が議員選にまで飛び火することを懸念したからか、支持撤回を表明する動きが一気に加速した。
党重鎮のマケイン氏らが不支持を表明。スーン上院議員はツイッターで『(副大統領候補の)ペンス氏が直ちに党の大統領候補になるべきだ』と候補者差し替えにまで言及。両院の同党の議員約300人のうち40人超が不支持となった。
これまで沈黙を守ってきた、ライス元国務長官も同日、フェイスブックで『もういい加減にして!トランプ氏は大統領になるべきではない。撤退すべきだ。世界で偉大な民主主義国家の最高位につく威厳と威信のある人物を支持したい』と主張。俳優のシュワルツェネッガー前カリフォルニア州知事も『1983年に(米国)市民になってから、共和党候補に投票しないのは今回が初めてになる』と不支持を宣言した。
トランプ陣営も動揺が隠せない。これまでトランプ氏をかばい続けてきたペンス氏は8日、『一人の夫として、父として、トランプ氏の言動に気分を害した。これは擁護できない』と突き放しつつ、『彼の後悔と謝罪の表明は歓迎する』と火消しに躍起になった。
ニューヨークのトランプ・タワーには8日、ジュリアーニ元ニューヨーク市長ら陣営幹部が集まって対応を協議。会議を終えたジュリアーニ氏は、党内の『トランプ降ろし』の動きについて『党内勢力による異分子への戦いだ。トランプ氏が最も人気のある候補者だ』と語り、不快感をあらわにした。
≪強制交代は困難≫
党内で撤退論が膨らんでいることを受け、トランプ氏は8日、『メディアとエスタブリッシュメント(既成勢力)が私を追い出そうとしている』とツイッターで党側を牽制。『私は絶対に撤退しない。私の支持者を見捨てない』とも宣言した。
実際、トランプ氏が自ら身を引かない限り、大統領候補を交代させるのは容易ではない。共和党の規則は、大統領候補が『死亡、辞退、その他の理由』で空席になった場合にだけ、全国委員会が後任を指名することができると規定。党の都合で候補者を一方的に変えることはできない。
規則変更という『奥の手』もあるが、手続きに時間が必要で現実性は乏しい。何より党を完全に分断させる恐れがある。
また、すでにトランプ氏の名前を記した投票用紙が印刷されている。州によっては期日前投票が始まり、既にトランプ氏に投票を済ませた有権者もいる。投票日を迫るなか、トランプ陣営も、不支持勢力も、立て直しの戦略が描けないのが現実だ。
トランプ氏は8日に配信したビデオで民主党のクリントン氏への対抗心をあらわにし、『もっと議論したい。日曜日の討論会で会おう』とあくまで戦い続ける姿勢を強調した。9日の第2回討論会ではトランプ氏の『わいせつ会話』が議題になるのは必至。ここでもし、トランプ氏の劣勢が鮮明になれば、党内の『不協和音』がさらに増幅する可能性がある」。
9日の第2回TV討論会直後のCNNテレビの世論調査でクリントン氏が勝利57%とトランプ氏勝利34%上回った。前回の62%より低下したが、2連勝である。トランプ氏は前回の27%よりは上積みしたが2連敗である。本選でのクリトン氏圧勝の可能性が強まったといえる。