2016年6月16日 日経「2016参院選」「農業票、TPPが影」「東北5県の農政連、自主投票、自民けん制」

日経の「2016参院選」に「農業票、TPPが影」「東北5県の農政連、自主投票、自民けん制」が書かれている。

「22日公示―7月10日投開票の参院選で、自民党の有力な支持基盤である農業団体票に異変が起こっている。東北6県のうち福島を除く5県の農協政治連盟(農政連)は、環太平洋経済連携協定(TPP)を進める政府に反発。自主投票を決め、同党をけん制する。比例代表でも自民、民進両党からそれぞれ候補が出る形で票を二分する。勝敗を占う1人区の勝敗にも影響を与えそうだ。

<「説明浸透せず」>

安倍晋三首相(自民党総裁)は14日、遊説場所に岩手、宮城両県を選んだ。盛岡市での街頭演説で『我々は大切な農業を守ってゆくために農業の改革を進めている』と強調。農林水産物・食品の輸出を1兆円まで増やす政府目標を当初予定の2020年から前倒しする意向を重ねて示した。

TPPに関しては、この日臨んだ4カ所の演説会場のうち触れたのは仙台市の1カ所だけだった。背景にあるのは農業票の離反への警戒だ。

東北5県の農政連は『TPPに入った場合の農家の不安に配慮した』(青森)などとして、選挙区、比例ともに自主投票を決めた。7日に開いた自民党の全国幹事長会議では山形の代表者から『農家への説明がまだ浸透していない』との声が上がった。

農業が盛んな東北6県は今回参院選からすべてが定数1の1人区になり、いずれの選挙区でも激戦が予想される。07年参院選では、当時4つあったすべての1人区で自民党が議席を落とし、大敗の要因となった。

農業県といえば九州も同じだが、東北は『相対的に自民党の地盤が弱く、政府方針への反発が強い地域』(党関係者)。今回も例えば山形選挙区では、農協幹部で自民新人の候補と、野党が統一候補として推す無所属元職が激しく競う。

<民進は対応曖昧>

比例代表でも異変が起きている。3年前の前回選は自民党から出馬した全国農政連の組織内候補が約34万票を獲得。すべての自民比例候補のうち2番目に多い得票で議席を得た。今回は熊本県の農協組合長が、全国農政連からの推薦を受けるが、民進党からも鳥取県の畜産農協組合長が出馬を予定。農業票を奪い合う。

民進党は参院選公約の原案でTPP合意に反対する立場を盛り込んだ。3月の結党時の基本政策で『経済連携協定によって自由貿易を推進する』としており、あくまでも今回の合意内容を『守られた<聖域>はゼロで国益が守られていない』と批判する。

ただ、旧民主党政権時代でTPP交渉を推進した経緯もあり、党内にはTPPに前向きな意見も多い。岡田克也代表は秋の臨時国会でのTPP協定案への対応について『情報が開示されないと判断できない部分が残る。今のままでは反対だ』と述べるにとどめた。街頭演説ではTPPにほとんど触れておらず、ちぐはぐな面も目立つ。

共産党や社民党はTPP反対を明確に打ち出し、農業票の争奪に意欲を示す。とはいえ『長年自民党を支えてきた基盤であることを考えれば票が流れるのは限定的』(自民党関係者)。九州選出の自民党の中堅議員は『棄権に回る票が多くなる』との見方を示す」。

東北5県の農政連が自民党をけん制すべく自主投票に踏み切った。結果、秋田は自民優位、宮城は野党優位で、残りの青森、岩手、山形は拮抗している。問題は、農政連の自主投票が野党にどれだけ流れるか、である。最後は勝ち馬に乗ることになるが。

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