2016年6月16日 朝日の社説に「英国民投票」「欧州の中で歩む決断を」

「ロシアと中国を利するな」

朝日の社説に「英国民投票」「欧州の中で歩む決断を」が書かれている。

「英国と欧州だけでなく、これからの世界の歩みに大きな影を落とすだろう。英国で23日、欧州連合(EU)からの離脱か残留かを問う国民投票が実施される。

英国は、EUと距離を置こうとする世論が根強い国である。しかし、もし離脱となれば、英国の経済と世界の市場が大きく動揺するおそれが強い。

政治的な波紋ははかり知れない。難民問題やテロなど多くの課題を抱える欧州の結束にひびが入るのは間違いない。EUの対外的な影響力がそがれ、国際社会で掲げてきた人権や民主主義、国際法による秩序にも影響を及ぼしかねない。

どの国であれEU離脱となれば、1950年代から続いてきた欧州の統合の流れが大きく後退することになる。人や物の流れがますます国の垣根を越える時代に、一国に閉じこもろうとする動きが広がれば、地球規模の問題の解決はいっそう遠のくだろう。

英国は、国際協調を力強くリードすべき主要国の一つであり、結束に背を向けて単独行動に走る国であってはなるまい。EUに残留する道を選んでもらいたい。

英国は欧州各国とたもとを分かつのでなく、欧州の一員として歩み、協力を進めつつ、自国の繁栄の道を探ってほしい。これまでの世論調査では、残留を望む声がおおむね優位だった。しかし、ここ何週間か離脱派が追い上げている。

その背景にある大きな理由の一つは移民の問題だという。EUの政策に縛られず、独自に移民の流入を絞る道を探るべきだという声が強まっている。米国のトランプ現象や欧州各国での右翼の伸長など、国を閉ざそうという内向きの意識は、世界に広がっている。英国の世論も、そんな風潮に流されているようだ。

しかし、立ち止まって考えてほしい。英国が大戦後の長い国勢の衰退から脱し、いまの繁栄を築いたのは、国を開き、グローバル経済の恩恵を受けてこそだった。そんな現実をいまさら転換しようがないだろう。

懸念されるのは、英国内での議論が経済や移民など一部に集中し、大局的な論議があまり大きく聞こえてこないことだ。欧州大陸とどんな関係を維持すべきか。その問いは、文明史的な視野の中で長い時間をかけて議論を重ね、国民のコンセンサスを築く性格のものである。英国と世界の未来のために、冷静な判断にもとづく決定を、英国民に期待したい」。

社説の主旨である「欧州の中で歩む決断を」は、正論である。

23日、英国で欧州連合からの離脱か残留かを問う国民投票が実施されるが、直近の世論調査で離脱派が僅差であるが残留派を上回っているからである。離脱が現実のものとなる可能性が出てきた。

問題は、英国のEU離脱が、プーチン大統領のロシアと習近平主席の中国の強権主義を利することになることである。EU・米・日が主導する国際法による秩序体制からの離脱と同義であるからだ。国際法による秩序を破壊する無法者国家であるロシアと中国を抑止するためには、EUの結束が必須である。「欧州の中で歩む決断を」は正解である。

pagetop