2016年5月17日 日経「2016参院選」「攻防アベノミクス4」「『保育園落ちた』矛先かわせ」「飛び交う待機児童対策」
日経の「2016参院選」「攻防アベノミクス4」に「『保育園落ちた』矛先かわせ」「飛び交う待機児童対策」が書かれている。
「3月24日、自民党本部で開かれた待機児童問題等緊急対策特命チームの会合。7月の参院選で改選を迎える片山さつき参院議員が危機感をあらわにした。『このままでは首都圏の票が取れなくなる。野党を上回る対策が必要だ』
「保育園落ちた日本死ね」。待機児童問題は2月に書き込まれたブログを機に急速に与野党が対決する参院選の争点に浮上した。
問題を広げたのは民主党(当時)の山尾志桜里衆院議員の国会質問だ。安倍晋三首相が『本当か確認しようがない』と答弁して批判を浴び、野党の勢いを増した。野党5党は国会に保育士の給与を月5万円増やす法案を提出。あおられた与党も対策に乗り出した。
『新たに2%相当の処遇改善を行う』。首相は4月26日、首相官邸で開いた一億総活躍国民会議で表明した。2%増は平均月額換算で約6000円アップ。一方、政調会長に就いた山尾氏は記者会見で『感覚がずれている』と批判。野党の5万円増額法案に関し『与党は審議拒否している。問題に本気で取り組むなら議論に応じて』と訴えた。
ただ、現場からは与野党の政策双方に不満がもれる。たとえば、認可保育所の過半数を占める非正規職員や私立保育所の職員。認可保育所の正規職員と比べた格差への不満は大きい。
『保育士が足りないなら正規採用を増やして』。愛知県の50代保育士は訴える。育児を終えて復帰しようにも正規への道は狭き門。一方、居住する自治体では今年度『担任を持つフルタイム』の非正規を100人以上募集した。『責任は重く長い残業を強いられるのに給料は大幅に安い。皆やりたがらない』と語る。
与野党は保育所増設も訴える。だが、それも一筋縄ではいかない。千葉県市川市。4月に開園を予定していた私立保育所が3月、開業を断念した。『ここの道路は狭い。保育所はちょっと』と計画地前を頻繁に通る70代女性。保育所は定員100人超を予定。混雑や騒音を危惧した周辺住民が『静かに暮らす権利がある』と署名活動した。妊娠中の34歳女性は『とにかく残念。少しでも枠が欲しかった』と語る。
保育所を巡る規制緩和も賛否両論だ。政府は3月末の緊急対策に、小規模保育所の定員引き上げなどの緩和策を盛りこんだ。これには母親らから保育の安全性を下げるとの懸念も相次ぐ。民進党は参院選に向けて『質を落として子どもを詰め込む』と批判を強める。
待機児童問題は与野党の『政策合戦』の様相だ。だが、保育士の給与を月5万円増やせば約2800億円かかるなど財源問題も残る。参院選をにらんだ大盤振る舞いに終わらず、議論を深めているかが問われている」。
待機児童問題は与野党の『政策合戦』の様相を呈しているが、参院選の争点化になり得ていない。保育所増設が住民の反対でとん挫、野党の保育士給与月5万円増の案に、年2800億円の財源問題が、政府の小規模保育所の定員引き上げ案に対して、野党は「質を落として子供を詰め込む」と批判。野党案が非現実的だからである。事実、民進党の支持率が7%前後で低迷している