2015年12月20日 産経「一筆多論」松本浩史・論説委員が「問う政策あってこその同日選」

産経の「一筆多論」に松本浩史・論説委員が「問う政策あってこその同日選」を書いている。

「安倍晋三首相は大勝負を打つのかしら――。政界では、まだそよ風ほどでしかないけれど、衆院の解散風が吹き始め、来夏の参院選との同日選が取り沙汰されている。解散権が先触れもなく行使されたらたまったものではないから、衆院議員は押しなべて『首相の存意は奈辺にありや』と気が気ではないようだ。

同日選は戦後、昭和55年と61年の2回行われている。最初は大平正芳政権下のことで、『ハプニング解散』と後世、評されるように、多くの政界関係者にとって不意打ちみたいものだった。まさか通るまいとタカをくくっていた内閣不信任決議が、自民党から欠席者が出て可決となった。

したがって、よしんば、安倍首相が同日選をもくろんでいるのなら、練りに練って主体的に解散に打って出た中曽根康弘政権に倣うのが賢い。

言うまでもなく、解散権をいたずらに行使しては、権力の乱用となる。自民党の事情だけをもって日本の行く末に思いを致さないようでは、言語道断である。日本のことばかりで世界があるのを知らず、というのでも困る。

解散権は『首相の大権』であるからこそ、こうと信じる政策を堂々と掲げることが、何よりも大切となる。そうでなければ、どんな言い訳も立たない。

ところで、このところの安倍首相が置かれている政治環境は、中曽根氏とかなり似ている。まず指摘すべきは、『一票の格差』是正策に焦点が当たっていたことだ。昭和58年衆院選をめぐる訴訟で最高裁は『違憲』と判断した。このため中曽根氏は『8増7減』の是正策を講じ、国会の正常化を解散の大義に掲げた。

前回衆院選をめぐり、最高裁は先に『違憲状態』と断じている。安倍首相にしても、何らの措置もせずに解散カードはなかなか切れないだろう。衆院では議長の下に選挙制度調査会が設置され、改革案が来年1月に提出される。ほどなく選挙関連法の改正が、政治課題になることは請け合いだ。

総裁任期をめぐる党則改正がくすぶっていた事情も重なる。中曽根氏は、党則を順守するとして『3選』を否定したが、大勝を理由に1年延長となった。安倍首相も平成30年9月までの総裁任期の延長を視野に入れているとの見方は消えない。

選挙直前には、日本でサミット(主要国首脳会議)が開かれ、中曽根氏は、国際社会のひのき舞台で大いに存在感をみせつけた。伊勢・志摩サミットは参院選前の来年5月に開かれる。

同日選については、①じっくりと候補を選べず、選挙権の侵害に当たる②参院議員が半数になっているのに、緊急集会を開催できるのか③そもそも憲法違反である(47条など)④参院の独自性が喪失しないか、などの議論がある。それでも2回の同日選は、選挙無効とはなっていない。

中曽根氏は後日、『正月から考えていた。死んだふりをした』と語った。安倍首相も腹の中はおくびにも出さないだろう。実施か否か。年明けの政治の動きは同日選の帰趨を抜きに語れない」。

氏が指摘している「問う政策あってこその同日選」は、正論である。消費再増税凍結の是非と憲法改正の是非を国民に問うは、同日選の十分な大義名分になるが。

pagetop