2015年3月29日 朝日 社説 「イエメン危機」「国家崩壊防ぐ協力を」
朝日の社説に「イエメン危機」「国家崩壊防ぐ協力を」が書かれている。
「シリアやリビアに続き、中東でまた一つの国が紛争の影に覆われている。アラビア半島南部のイエメンである。
旧約聖書に登場する『シバの女王』が始めた王国はこのあたりらしい。豊かな歴史と文化に彩られた地域。しかし、近年は内紛の絶えることがない。北部を拠点とした少数派のイスラム教シーア派武装組織『フーシ派』が、首都を掌握し、2月に暫定政府樹立を宣言した。同じシーア派の国イランの支援を受け、さらに南部に侵攻している。南部に逃れたハディ暫定大統領を支えるスンニ派のサウジアラビアなどは、フーシ派への空爆に踏み切った。
過激派組織『アラビア半島のアルカイダ』なども活動を広げ、対立構造は複雑だ。シリアやリビア、さらにイエメンと海を隔てるソマリアでは、国家の統一が保てず、過激派が勢力を広げている。テロの温床ともなっている。
イエメンまでそうなると、周辺への影響が計り知れない。安定に導くため、欧米や周辺諸国は協力態勢を築く必要がある。
イエメン沖はスエズ運河に直結する航路で、航行に支障が生じると日本への影響も甚大だ。イエメンの安定化に向けて日本に何ができるか、模索したい。
イエメンは冷戦時代に南北で別の国に分かれていたが、1990年に統一された。しかし、国内では様々な勢力が対立を続け、10年あまり前からフーシ派が次第に勢力を拡大した。背後でてこ入れするイランは自国の核開発をめぐり、米国などとの間で枠組み合意に向けた大詰めの協議の最中だ。もし合意を望み、国際的な孤立から抜け出したいなら、イエメンで争いをあおる場合ではあるまい。紛争の種を振りまくのでなく、停戦や和平を助ける姿勢を持たないことには、国際社会にも受け入れられない。
サウジも、軍事行動に慎重であるべきだ。スンニ派とシーア派の代理戦争を繰り広げると、周辺に飛び火する恐れがある。両派の対立を元々抱える湾岸諸国も動揺すれば、日本の原油供給にも支障が生じかねない。
さらに、混乱に乗じようとする過激派にも警戒が必要だ。『アラビア半島のアルカイダ』は、フランスやデンマークのテロへのかかわりも取りざたされる組織である。混乱の長期化は、イエメン国民の暮らしを破壊するとともに、国際テロの危険もいっそう高めかねない。日本を含む国際社会には、イエメンの国家崩壊を傍観する余裕はないはずだ」。
社説に書いている「サウジも軍事行動に慎重であるべきだ。スンニ派とシーア派の代理戦争を繰り広げると、周辺に飛び火する恐れがある。両派の対立を元々抱える湾岸諸国も動揺すれば、日本の原油供給にも支障が生じかねない」は、正論である。イエメン沖はスエズ運河に直結する航路であり、第2のホルムズ海峡危機となるからである。当然、機雷掃海に海上自衛隊派遣が必須となるが。にもかかわらず、朝日の社説は、「日本を含む国際社会には、イエメンの国家崩壊を傍観する余裕はないはずだ」で結んでいる。観念的平和論である。