2015年4月6日 朝日「日曜に想う」 星浩・特別編集委員「日中の知恵、世界が見ている」
「日中の言論の自由を守れ」
朝日の「日曜に想う」に、星浩・特別編集委員が「日中の知恵、世界が見ている」を書いている。
「街路樹の柳が芽吹き始めた春の北京を駆け足で回ってきた。中国社会科学院日本研究所と北京大学国際戦略研究院で、研究者らと日本政治や日中関係について意見交換するためだ。
まず『日本は右傾化しているか』が論議になった。中国側からは『安倍晋三首相は戦後70年の談話を出すに当たって、侵略などのキーワードにこだわらないと述べている』『防衛省では、背広組優位の体制を背広組と制服組が対等になるよう改める法改正が進んでいる。右傾化の表れではないか』といった意見が出た。日本のニュースを細かく追っていることがよく分かる。
私は、こんな見方を披露した。『安倍政権は<右傾化>と受け取られる政策が打ち出されていることは確かだが、日本の政治が一直線に右傾化の道を歩んでいるかといえば、そうではない。この15年間を見ても、小泉純一郎首相は靖国神社参拝を繰り返したが、福田康夫首相は中国との関係改善に熱心だった。民主党政権も、軸足はハト派の外交路線においていた。日本の政治は小選挙区制度の影響もあって、右傾化というより、揺れ幅が大きくなっていると見るべきだろう』
私はメディアの役割について、持論を述べた。『さまざまな政策課題で世論には賛否がある。それをバランス良く紹介し、解説を加えて国民に判断材料を提供していくのが新聞などメディアの役割だ。ただ、インターネットの普及によって多くの意見がメディアを介さずに流され、政治家と国民が直接つながり始めた。その結果、過激な意見が注目を集めるという傾向が出ている。日中両国とも、メディアのあり方を考えなければならない』
中国側はフェイスブックなどへの規制が続いている現状を説明。『中国はまだ発展途上であり、言論の自由化までには、なお時間が必要だ』『メディアが賛否両論を紹介して議論を深めるというレベルには達していない』といった声が出ていた。
北京滞在中、現地在住の日本人Aさんから興味深い体験談を聞いた。無料通信アプリ『LINE』に似たサービスに『戦時下日本の言論統制をテーマにした本の読書会』の案内が出ていた。会場の北京市内の喫茶室には学生や研究者とみられる中国人約40人が来ていた。『軍国主義日本』への批判一色になるのだろうと思っていた。ところが、実際は違った。
『言論の自由がないと、社会は悪い方向に流れてしまう。そのことを戦時下の日本が証明している』『日本の歴史は中国にとっても大事な教訓だ』
Aさんは、発言せずに聞いていた。『中国の中にも、将来の民主的な国づくりに向けて日本の経験を参考にしたいという考えが生まれている。日本側も胸襟を開いて話せば、中国の役に立てるはずだ』と思ったそうだ。
福田元首相は昨年7月、10月に習近平国家主席と相次いで会談し、日中首脳会談の地ならしをした。この3月にも中国・海南省で開かれた『ボアオ・アジアフォーラム』の理事長として習主席と意見交換。両国のパイプ役を果たしている。『尖閣問題などで日本が言うべきことを主張するのは当然だ。一方で、日中は引っ越しのできない隣国なのだから、対話が欠かせない。日中双方が対立を乗り越えて協力関係を築くために大人の知恵を出せるか。世界が見ているということを忘れてはならない』と福田氏は語る。
安倍首相が戦後70年談話にどんな歴史観や世界観を盛り込むのか。中国がそれにどう反応するのか。そして、両国が関係改善をどう進めるのか。日中の知恵を『世界が見ている』ことは間違いない。Aさんが話していた言論の自由だけでなく、大気汚染、少子高齢化に向けた社会保障など、日本が中国に伝えられる経験は数え切れない。微小粒子状物質PM2・5で曇る北京市内を歩きながら、両国の行く末に思いをめぐらせた」。
氏が言う「日中の知恵、世界が見ている」に異論がある。中国共産党主導の「歴史戦」ありきだからである。福田元首相の言う「日中双方が対立を乗り越えて協力関係を築くために大人の知恵を出せるか」の前に、先ず、中国共産党主導の「軍国主義日本」「安倍政権右傾化」との日中対立を煽るプロパガンダを停止すべきである。
問題は、朝日が、中国共産党主導の「プロパガンダ」の走狗となっていることである。中国の研究者、学生が「言論の自由がないと、社会は悪い方向に流れてしまう」と証言しているのに、である。言論の自由を制限しないと共産党主導体制が維持できないのに、あろうことか、その中国共産党の走狗に朝日がなり下がっているのである。「日中の知恵」の前に、先ず「日中の言論の自由」を守れである。