2019年2月19日 東京 社説「勤労統計不正」「支給漏れは許されない」
「『消えた年金記録問題の再現』は不発」
東京の社説に「勤労統計不正」「支給漏れは許されない」が書かれている。
「毎月勤労統計不正で雇用保険などが過少支給された人に不足分を支給する工程表を厚生労働省が公表した。本来受け取れるはずの給付だ。迅速かつ正確に支給するため万全を期して進めてほしい。
当然だが、不足分の支給は対象者全員に実施すべきだ。だが、厚労省の担当者は『<最後の一人まで>とは申していない』と述べた。全員に支給できない事態を想定して予防線を張っているようにみえる。それでは過少支給された人は納得しないだろう。
工程表によると、雇用保険や労災保険などを受給中の人は3~10月に通知を始め支給する。既に受給を終えている人は4~11月に通知を始め順次支給する。
対象者が延べ約2千万人いる雇用保険は、ほとんどが既に受給を終えている人で、支給は11月ごろ以降になる。昨年12月の問題発覚から1年近く待たされることになる。本来はとっくに受給できていたことを考えると対応はあまりにも遅い。
問題は延べ1千万人以上の現住所が分からないことだ。自治体の住民票データなどを管理する住民基本台帳ネットワークを活用して対象者を追跡する。それでも住所が把握できないケースはある。受給権者が亡くなっていて未支給分を受け取れる親族が分からない場合もそうだ。厚労省も有効な対策はないと認める。
約5千万件もの年金記録の持ち主が分からない『宙に浮いた年金記録問題』の記録確認作業の経験も生かすと厚労省は説明するが、どうなるか。あらゆる手だてを使う努力が要る。
追加支給に必要な事務費約195億円は、労使が支払う雇用保険などの保険料で負担する。この点について安倍晋三首相は国会で『保険料の上昇につながらないよう、既定の事務費を削減して確保する』と述べたが、疑問だ。予定されていた事務費も制度運営に必要なものではないのか。
なぜ国の不祥事の費用を労使が負担しなければならないのか、納得できる説明を聞きたい。
7日付発言欄(東京新聞)に追加支給対象者の投書が載った。『失業給付が失業中の生活の支えとなる者には、その差額がいくらであっても、本当に大きな損失です』との訴えは切実だ。『行政は国民の生活をサポートするための機関ではないのでしょうか』との指摘にうなずく。政府はこの声を重く受け止め追加支給に最善を尽くすべきだ」。
社説の主旨である「支給漏れは許されない」に異論がある。
毎月勤労統計不正で雇用保険が過少支給された人に不足分を支給する工程表を厚生労働省が公表したが、延べ約2千万人いる雇用保険対象者の半分の1000万人以上の現住所が分からないことである。自治体の住民票データなどを管理する住民基本台帳ネットワークを活用して対象者を追跡するがそれでも住所が把握できないケースがあることは必至である。「支給漏れは許されない」と言ってもやむを得ない。
問題は、追加支給の総額が800億円で、対象延2000万人で1人当たり4000円と少額であることだ。07年の約5000万件の「消えた年金記録問題」とけたが違いすぎ、国民の実害が限定的であることだ。野党と東京を含む左派メディアは、「消えた年金記録問題」の再現を目論んだが、不発に終わっている。各種世論調査で、内閣支持率が上昇しているからである。04年から15年も続いた毎月勤労統計不正問題を安倍政権の責任とするには無理かあるからだ。野党・左派メディアが言う「アベノミクス偽装」も戦後最長の「景気拡大」という事実の前に「フェイクだ」と国民に見抜かれているが。