2018年6月25日 読売の「スキャナー」に「演習中止発言に困惑」「北非核化交渉」「米長官日韓の不安解消図る」

読売の「スキャナー」に「演習中止発言に困惑」「北非核化交渉」「米長官日韓の不安解消図る」が書かれている。

日米韓3カ国が14日の外相会談で確認した北朝鮮の『完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)』が実現するかどうかは、今後の米朝交渉の行方次第だ。非核化工程の協議が進まない段階で米国が米韓合同軍事演習の中止に言及したことには、同盟国の日韓から不安の声が上がっている。

<工程具体化>

『完全な非核化は当然、<検証>を明確に含んでいる』。ポンぺオ米国務長官は14日、ソウルでの日米韓外相会談後の記者会見でこう述べ、北朝鮮のCVIDを目指す考えを改めて強調した。13日には、非核化を『2年半以内』に達成できるとの見解を記者団に示した。

トランプ大統領と金正恩朝鮮労働党委員長が12日の首脳会談後に署名した共同声明には『完全な非核化』が盛り込まれたものの、CVIDやその達成時期は明記されなかった。ポンぺオ氏の一連の発言には、日韓の懸念を打ち消す狙いがあるとみられる。

ポンぺオ氏は来週にも、共同声明に基づき北朝鮮高官との非核化協議に臨む。核兵器や核物質の検証から廃棄までの具体的な工程表をまとめ、早期に着手できるかどうかが焦点だ。

<突然の表明>

トランプ氏が12日の記者会見で、正恩氏から弾道ミサイルのエンジン実験施設を破壊する意向を伝えられたと評価した上で、米韓合同軍事演習の中止検討を表明したことに、韓国内では戸惑いが広がった。

今月4日の段階で、韓国国防省副報道官は軍事演習の実施計画に変更はないと記者会見で述べており、トランプ氏の中止発言は寝耳に水だったようだ。韓国政府高官も12日、『(中止は)韓米で協議すべきことだ』と慎重な姿勢を見せた。

演習中止は、CVIDに向けて北朝鮮の具体的措置を引き出すための環境作りの一環とみられる。北朝鮮の朝鮮中央通信は13日、『米国側が関係改善のために真剣な信頼構築措置を取っていくならば我々もそれに応じて引き続き次の段階の追加的な善意の諸措置を講じていく』としている。

ただ、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成を宣言した北朝鮮がミサイル実験施設を破壊することが、演習中止に見合う具体的措置と言えるのか疑問視する見方もある。

<アリの一穴>

米韓は毎年春に図上演習と野外機動演習、夏にも机上演習を行っている。定期的に幹部が入れ替わる在韓米軍が、韓国軍との指揮命令系統を確認し、連合作戦能力を維持するためには不可欠な訓練で『非核化交渉のカードにすべきでない』との声は米韓両軍に根強い。

1960年代に合同演習『チーム・スピリット』が一時中止された例はあるが、トランプ氏は中止期間を明言しておらず、長期化の懸念がある。韓国軍合同参謀本部の申源湜元作戦本部長は『演習中止を将来的な在韓米軍の撤収につなげるのが正恩氏の狙いだ』と指摘する。有事への即応力を失うことは在韓米軍の存在意義を揺るがし、撤収論に火をつけかねないと警告する。

≪政府、安保影響を憂慮、在韓米軍の削減 警戒≫

日本政府は、トランプ米大統領が米韓合同軍事演習の中止や将来的な在韓米軍削減の意向を示したことについて、米軍の抑止力が低下して日本の安全保障にとってマイナスになると憂慮している。

河野外相は14日の日米韓外相会談後の共同記者会見で、米韓合同軍事演習について『中断されたとしても、北朝鮮が非核化に向けた行動を取るかどうかで変わるものと理解している』と強調した。北朝鮮の対応次第では演習は再開されるとの見方を示したものだ。

日本政府は軍事演習中止の余波で、日米韓3か国で実施しているミサイル防衛などの共同訓練も中止に追い込まれることを警戒しており、米側に継続を求める方針だ。外務省幹部は『非核化が見通せないうちは、北朝鮮への融和ムードを拙速に高めるべきではない』と語る。

在韓米軍の削減となれば、日本の安全保障環境へ与える影響が大きい。中国が朝鮮半島有事に備えていた戦力を日本周辺などに回すことが可能となり、『日本に対する中国の軍事的圧力が格段に強まる』(自衛隊幹部)ためだ。

ポンぺオ米国務長官は14日の河野氏との会談で『在日米軍の態勢に変わりはない』と説明した。だが、日本政府内には『トランプ氏が駐留経費負担をきらい、削減を主張する可能性はある』(防衛省幹部)と、将来的に在日米軍も削減議論の俎上に載るとの見方もある。

北朝鮮は日本を射程に収める短・中距離弾道ミサイルを数百発保有しているが、米朝首脳会談の共同声明に弾道ミサイル問題が触れられなかったことも日本にとって懸念材料だ。

河野氏は共同記者会見で、核などの大量破壊兵器に加え、『あらゆる射程の弾道ミサイルの廃棄』を訴えた。日本政府は弾道ミサイル問題が置き去りにならないよう、米国に働きかけを強める構えだ」。

米韓合同演習中止発言に日韓が困惑と書いているが、トランプ大統領が、金正恩氏にCVID履行を迅速に迫る圧力である。迅速に履行が進捗しなければ、合同演習を再開するのみである。まして在韓米軍縮小、撤退はあり得ない。対中国への抑止力のためにである。

pagetop