2015年3月29日 朝日 社説 「『我が軍』発言」「憲法軽視が目にあまる」
「憲法守って国滅ぶ」
朝日の社説に「『我が軍』発言」「憲法軽視が目にあまる」が書かれている。
「安倍首相が参院予算委員会で、自衛隊を『我が軍』と呼んだことが波紋を広げている。自衛隊と他国軍との共同訓練について問われ、『<我が軍>の透明性を上げていくことにおいては、大きな成果を上げている』と答えた。これが批判されると、菅官房長官は記者会見で『自衛隊は我が国の防衛を主たる任務としている。このような組織を軍隊と呼ぶのであれば、自衛隊も軍隊の一つということだ』と述べ、首相発言を追認した。
だが歴代政府は『自衛隊は、通常の観念で考えられる軍隊とは異なる』としてきており、憲法上、自衛隊は軍隊ではない。
単なる呼び方の問題ではない。自衛隊の位置づけは憲法の根幹にかかわる。首相が国会で『我が軍』と言い、官房長官が修正もせずに首相をかばうのは、憲法の尊重・擁護義務を負う者としてふさわしい所作ではなかろう。憲法によって権力を縛る立憲主義の原理をないがしろにするものと言わざるをえない。
たしかに国際的には自衛隊は軍隊の扱いを受けている。だがそれは自衛隊員が国際法上の保護を受けるためだ。他国軍との共同訓練に関する答弁だったとはいえ、国会では自衛隊と呼ぶのが当然ではないか。
憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認をはじめ、一連の安保法制の議論を通じて、安倍政権には憲法軽視の姿勢が際立っている。
日本の安保政策は、憲法との整合性を慎重に考えながら組み立てられてきた。9条で『陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない』としつつ、自衛隊が合憲とされるのは『自衛のための必要最小限度の実力は認められる』と解釈したからだ。
1967年に佐藤栄作首相が『自衛隊を、今後とも軍隊と呼称することはいたしません。はっきり申しておきます』と答弁した基本原則は、簡単に覆せるものではない。
内閣府の最新の調査では自衛隊に『良い印象』と答えた人が92・2%と過去最高になった。東日本大震災で黙々と作業に励む隊員たちの姿は、国民の目に焼き付いている。あえて軍と呼ばず、抑制的な姿勢に徹してきた自衛隊への評価の到達点ではないか。
持てる力をむやみに振り回さず、海外の紛争と一定の距離をとってきたからこそ、得てきた信頼がある。その確かな歩みの延長線上に、国民や国際社会の幅広い理解を得られる活動のあり方を描くべきだ」。
社説の主旨である「『我が軍』発言、憲法軽視が目に余る」に、異論がある。
安倍首相が参院予算委員会で「自衛隊」を「我が軍」と呼んだのは、憲法9条改正の本音を吐露したからである。現行憲法では、自衛隊は軍隊との位置づけになっていないが、国際的には軍隊との位置づけである。このかい離を是正することが日本の平和と安全を守ることに置いて喫緊の課題だからである。集団的自衛権の要諦である米軍との共同作戦における必須条件である。自衛隊を「普通の軍隊」にすることが、である。それには、憲法9条を改正するのが筋であるが、9条改正には時間かかり、今の危機には間に合わない。そこで憲法解釈変更で「普通の軍隊」への一歩を歩み出したが、昨年7月の「集団的自衛権の行使容認」の閣議決定、それに基づく安保法制の整備である。
問題は、憲法は何のために存するのか、である。憲法守って国滅ぶの愚を犯してはならないことである。自衛隊を普通の軍隊にする試みは、憲法を軽視するのではなく、解釈変更して国の平和と安全を守ろうとする行為である。社説の「憲法軽視が目にあまる」は、「憲法守って国滅ぶ」の勧めとなるが。