2015年2月8日 日経「日曜に考える」「羅針盤」 西村博之・米欧総局編集委員「なぜ外れるのか、原油価格予想」

日経の「日曜に考える」の「羅針盤」に、西村博之・米欧総局編集委員が「なぜ外れるのか、原油価格予想」を書いている。

「原油価格の見通しを誤ったとして国際エネルギー機関(IEA)への風当たりが強まっている。こうも市場が急変すると責めるのは酷に映るが、世界中の企業や投資家が頼りにする数字だけに無理もない。

IEAは2012年11月、当時1バレル100ドル強の価格が2020年にかけ130ドル台に向かうと予想。1年後も価格の上昇シナリオを保ち『石油余剰の時代が来たわけでない』と強調した。実際には原油価格は先週5年10カ月ぶりに1バレル40ドル台前半に下がり、米原油在庫は記録的水準に膨らんだ。

IEAの見通しの甘さは専門家の間では語り草だ。まず1990年代後半の石油価格の急落を見逃した。2003年以降の価格急騰や、金融危機後の急落も見通せず、シェール革命の影響を察知するのも遅れた。

ただ他の機関も大差はない。米エネルギー情報局(EIA)は1980年代や直近、価格の上昇を予想して外した。米欧の大手金融機関も足元で予想の下方修正を連発している。

では、なぜ予想は外れるのか。産油国の政治的思惑が絡む難しさ。無難な予想を好む悪癖……。所説があるが、2012年に原油価格の『崩壊』を予想したハーバード大のマウジェリ氏は2点を挙げる。1つは技術革新。油井は期間とともに生産量が減るが、掘削技術の進歩で生産性が高まる面もある。その要因を無視したモデルで予想を立てたため生産能力の拡大を見通せなかったとみる。

第2が人々の認識のゆがみ。石油か枯渇するとの『ピーク・オイル』説は、価格が長期で上昇するとの先入観を植え付けた。いきおい価格上昇につながる地政学リスクなどを過大評価する傾向も強まった。

『大混乱がない限り価格は急回復はしないだろうが、潮の目が変わる兆しは増えている』。IEAは1月の月次報告で懲りずに価格の反転を予想したが、どう読むべきか」。

1バーレル50ドル以下では、シェ―ル革命が潰されるから、共存を図るために、1バーレル60ドル前後で落ち着くことになるが。1年かけて、である。1バーレル100ドルには2度と戻らない。

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