2014年10月12日 産経 「水平垂直」「日米ガイドラン再改定、中間報告」「中国念頭『あらゆる事態対応』」

産経の「水平垂直」に「日米ガイドラン再改定、中間報告」「中国念頭『あらゆる事態対応』」が書かれている。

「日米両政府が8日にまとめた日米防衛協力の指針(ガイドライン)の再改定の中間報告では、活動範囲や任務が広がり、防衛協力上の制約となっていた『地理的概念』が外れることが明確になった。米政府は再改定作業への評価を表明する一方で、中韓両国からは警戒の声が上がった。

前回、ガイドラインを改定した平成9年と現在を比較すると、日本を取り巻く安全保障環境の大きな違いは、急速な軍拡と海洋進出を進める中国の存在だ。
今回の新ガイドラインの中間報告でも、名指しこそ避けたが中国の脅威に対する危機感がにじむ。その最たるものが、主に朝鮮半島有事で対米支援を行うために生み出された概念『周辺事態』を撤廃した判断だった。

『今回のガイドラインがどこかの大きな国(中国)を想定していたとしても、尖閣諸島(沖縄県石垣市)への武力攻撃事態だけを考えていればいいわけではない』。

ある交渉担当者は、再改定の狙いについてこう語る。中国を念頭に置けば、尖閣諸島に武装勢力を送り込むような事態にはじまり、潜水艦探知などの警戒監視、台湾有事など多様な事態への対処が必要になる。現行の『平時・周辺事態・有事』という分類では、どれにも当てはまらない事態に対応しづらくなるというわけだ。

そもそも『周辺事態』とは、有事でも平時でもない『グレーゾーン事態』で、集団的自衛権の行使を禁じた当時の憲法解釈に抵触しない対米協力を可能にするための“苦肉の発明”だった。政府が再三、『地理的概念ではない』と説明しても、『周辺』という空間を発想させる概念を使ったことで、周辺事態法の国会審議では常に『周辺』の地理的範囲が問題視された。

しかし、7月の閣議決定では武力行使が認められない活動範囲について『現に戦闘行為を行っている現場』と想定しており、より柔軟な対米協力が可能となる。『我が国の存立が脅かされ、国民の生活、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険』があるなど条件を満たせば、集団的自衛権に当たる武力行使も認めている。

たとえば今回の中間報告では、集団的自衛権の行使を伴う対米協力の事例として、機雷除去などを想定した『海洋安全保障』が盛り込まれた。『ペルシャ湾で、放置すればわが国の存立に関わる場合には機雷除去をやることもあり得る』(日米外交筋)ことになる。

過去の憲法解釈では日本有事の際の個別的自衛権の範囲内でしか認められていなかった米艦防護も、日本の安全に関わるあらゆる緊急事態で認められることを意味する。公海上で攻撃にさらされる米艦を見殺しにするという、いびつな同盟関係から『新しいレベル』(ヘーゲル米国防長官)に移行することになる。

とはいえ、中間報告で盛り込んだ対米協力のあり方は具体論に踏み込んでいない。本当の意味で日米同盟の『新しいレベル』を提示するのは、日米両政府がガイドライン改定を目指す年末以降となる。

<公明配慮、具体策先送り>
日米両政府は、8日に公表したガイドラインの中間報告で、『集団的自衛権』の文言を盛り込まず、『日本と密接な関係にある国に対する武力攻撃が発生し、日本の武力行使が許容される場合の両政府間の協力』との記述にとどめた。日米交渉筋は『意識して<集団的自衛権>を使わなかったわけではない』としているが、明記を避けたのは公明党への政治的配慮が強く働いた結果といえる。
日米両政府は昨年10月に外務・防衛閣僚による安全保障協議委員会(2プラス2)で今年中に再改定することを確認したが、先送りする方向で調整中だ。安倍晋三首相は集団的自衛権の行使容認に向けた7日の閣議決定を踏まえた安全保障法制の準備作業を進めており、来年の通常国会に関連法案を提出する考えだ。

ただ、その前には自民、公明両党による関連法案の協議が控えている。『集団的自衛権』の明記を見送った背景には公明党との調整を円滑に運びたいとの思惑もあり、中間報告では集団的自衛権のについて『両政府間の協力を詳述する』との表現に落ち着いた。

公明党に配慮するあまり、集団的自衛権の行使対象や米軍との協力関係を過度に限定すれば、自衛隊が日本を防衛するための活動に制約が強まりかねない。閣議決定で集団的自衛権が憲法上許容されると判断した『国民の生命が根底から覆される明白な危険』に陥った事態に、有効な対処ができない危険をはらむことになる」。

日米両政府が8日にまとめた日米防衛協力の指針(ガイドライン)の再改定の中間報告の要諦は、「周辺事態」の概念を撤廃したことにある。そもそも「周辺事態」とは、有事でも平時でもない「グレーゾーン事態」で、集団的自衛権の行使を禁じた当時の憲法解釈に抵触しない対米協力を可能にするための「苦肉の発明」であり、国会審議で、常に「周辺」の地理的範囲が問題視されてきたからである。具体的には、集団的自衛権の武力行使の事例としてのペルシャ湾での機雷除去を容認するか否か、である。「周辺事態」の概念を撤廃したことは、ペルシャ湾での機雷除去を容認したと同義である。

問題は、公明党である。「周辺事態」撤廃に反対だからである。中間報告に「集団的自衛権」の文言を盛り込まなかったのは、公明党への配慮からであり、ガイドラン再改定を今年中から、来年に先送りするのも、そうである。安全保障法制の関連法案を来年の通常国会での、統一地方選挙後の提出としたのも同じ理由である。公明党への説得が必須となり、支持母体である創価学会の思想武装が急務となる

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