2022年8月15日 安全保障と核
核不拡散条約(NPT)再検討会議に岸田首相が参加し演説した。各国は唯一被爆国として、核保有国と非保有国の橋渡し役を担えるのではと期待もあったであろう。岸田首相は核兵器無き理想の世界と厳しさを増す安全保障環境との現実を結びつけると主張した。しかし、日本は核兵器禁止条約の不参加を決定し、締約国会議のオブザーバー参加もしなかった。
日本はアメリカの核の傘にあり、核保有国が参加しない枠組みでは実効性が期待できないとの論理である。NPTは核保有国5ヵ国に対して核軍縮を義務化しているが、ロシア、ウクライナ紛争や中国の軍拡を見るに時代を逆行してると感じる。被爆国であり被爆地広島地盤の岸田首相に「核兵器なき世界」の理想に期待を寄せる一方で、現実には厳しい安全保障のもとアメリカに対して核による抑止力強化を求めている現状だ。
日本の発信は世界にどの様に写ってうのだろう。いみじくも岸田首相は核戦力透明性の為「ヒロシマアクションプラン」を掲げた。中身の具体性は11月開催の「国際賢人会議」や来年のG7サミット(主要7カ国首脳会議)に持ち越されるであろう。直近のロシアによる核の脅威に核保有国と非保有国の間で二極化が進み、ますます核軍縮は減速している。
岸田首相は(平和の為の岸田ビジョン)や(新時代リアリズム外交)を掲げ、平和構築の為の役割や防衛力強化も強調している。敵基地攻撃能力保有に関する件などは特に国民に理解が必要だ。単に(核兵器のない世界)の理想を唱えている状況ではなく、日本に出来る事をアメリカの圧力や中国との狭間の中、行動に移していく時期であろう。衆議院を自ら解散しない限り、暫く国政選挙が無いこの時期に、国内に対しても防衛力強化と軍縮との整合性も丁寧に説明していく事が必要である。