2021年4月7日 中国・イラン25年間協定

「イランと中国の両政府は25年間にわたる包括的戦略パートナーシップ協定に署名し、経済や安全保障など幅広い分野で関係を強化することで一致した。バイデン政権が対中政策を巡り民主主義陣営の結束に力を入れる一方で、中国がイランなど米国と対立する国々を取り込む構図が鮮明になっている。

≪経済・安保、米に対抗≫

中東を歴訪している中国の王毅国務委員兼外相がテヘランでイランのザリフ外相と署名した。合意内容の詳細は明らかにされていないが、イラン外務省のハティブザデ報道官は『多層的かつ本格的なもので、貿易・経済・交通などでの協力のロードマップとなる』と表明。イランが原油を安値で安定供給する見返りに中国側の巨額投資が見込まれ、中東における中国の存在感が強まりそうだ。

米紙ニューヨーク・タイムズは協定について、中国の今後の対イラン投資は総額4000億ドル(約44兆円)に上る可能性があると報じ、その分野として金融、情報・通信、空港・港湾、鉄道、医療などを挙げた。想定される投資案件は中国が進める巨大経済圏構想『一帯一路』に沿ったものとみられる。重要航路をにらむペルシャ湾入り口近くのイラン南部ジャスクでの港湾開発プロジェクトなど、中国が戦略的な拠点を獲得する可能性もある。

協定には、共同での軍事演習や兵器開発、軍事情報共有など軍事面での協力強化も含まれている模様だ。

今回の協定は中国の習近平国家主席が2016年のイラン訪問時に提案していたもので、米国のトランプ前政権が18年にイラン核合意から離脱し経済制裁を強化して以降、本格的な協議が続いていたという。

中国外務省によると、両外相はイラン核問題についても深く意見を交換。ザリフ氏が『米国がまず一方的な制裁をやめるべきだ』と主張したのに対し、王氏も『核問題に関する現在の局面は米国の一方的な合意違反によってもたらされたものであり、無条件で協議に復帰すべきだ』と応じた。また、ザリフ氏は新疆ウイグル自治区や香港の人権問題を念頭に『イランは西側一部国家による中国への無理な圧力に反対し、中国と共に立つ』と明言したという。

イランは、1月に核合意復帰に前向きなバイデン政権が発足してからも、国際原子力機関(IAEA)による核施設の抜き打ち査察の受け入れを停止するなど、米国に対して強気の姿勢を貫いてきた。イランの最高指導者ハメネイ師は、米国が制裁を容易に解除しない場合は中露との関係強化や国内産業増強で苦境を乗り切るという、『両にらみ』戦略を持っているとの専門家の指摘がある。

イランが中国との戦略パートナーシップに踏み切ったことにより、米欧にとっては今後、核合意を巡るイランとの交渉がより難しくなるのは必至だ。

一方、王氏はイラン訪問に先立つ24日にはサウジアラビアを訪問し、実権を握るムハンマド皇太子と会談した。サウジにとって中国は原油の大口輸出先であるほか、国内に人権問題を抱える国同士という接点がある。

人権外交を掲げるバイデン政権の登場で米国とサウジの関係に隙間(すきま)風が吹く中、中国はサウジとの関係強化にも動き、反米・親米を問わず中東各国への浸透を図っている模様だ。【カイロ真野森作、北京・米村耕一】

≪核合意、深まる混迷≫

バイデン米政権は欧州と連携し、トランプ前政権が一方的に離脱したイラン核合意への復帰を模索している。核合意が中東地域の安定に不可欠とみて、復帰後は核合意には含まれないイランのミサイル開発規制などの交渉につなげる狙いがある。しかし、イランと中国との関係強化で復帰に向けた交渉そのものに不透明感が増している。

ブリンケン米国務長官は2月、英仏独の外相とオンライン形式で協議した際、共同声明で『イランと話し合う用意がある』と表明。欧州連合(EU)の提案に応じ、核合意を締結した主要6カ国(米英仏独露中)とイランの非公式会合に『招待されれば出席する』と歩み寄った。しかし、イラン側はこれを『時期尚早』と拒否し、トランプ前政権が発動した経済制裁解除の先行実施を求めた。

バイデン政権はイランとの『対話』を諦めたわけではない。ブリンケン氏は今月23日、ブリュッセルで開かれた北大西洋条約機構(NATO)外相会合に合わせ、英仏独の外相と改めてイラン核合意の維持について協議。翌日の記者会見では『外交の道は開かれている』『ボールはイラン側のコートにある』と対話に向けたメッセージを再びイランに送っている。

イラン核合意はバイデン氏が副大統領を務めたオバマ政権が交渉を主導し、実現した経緯がある。バイデン政権も欧州側と連携することで、合意への復帰やその後のより包括的な合意に向けた交渉の主導権を握りたい考えだ。しかし、中国とイランの関係強化で中国の影響力が増すのは確実で、米国の思惑通りに進まない公算が大きくなっている。

今後の焦点の一つになるのが、米イランの『仲介役』を務める欧州が事態を打開できるかだ。ただし、欧州でも中国とイランの軍事面での協力に対する警戒が根強い。中国とイランの関係が深まり核合意の形骸化が進めば、英仏独もイランのミサイル開発規制を視野に入れて、イラン封じ込めに動く可能性がある」。

27日、イランと中国の両政府は25年間にわたる包括協定に署名したが、期間が長すぎる。そもそも5年以内に中国共産党の崩壊は必至となり、44兆円の投資約束は空手形に終わる。習近平政権が米国主導のジェノサイド包囲網に怖れを為してのイランとの2年間協定である。バイデン政権は、オバマ政権とイラン核合意の復活を期待したが、中国によるウイグル族へのジェノサイドという、前トランプ政権からの課題を継承せざるを得ず、その間隙を突いての中国・イラン25年間協定である。結果、バイデン政権は不本意なから、対イランよりも米中問題を最優先せざるをえない。一方、バイデン政権は、習近平氏政権に、息子の問題などで、弱みを握られており、強硬姿勢に出られない。米国内からの反中機運醸成によって、レイムダック化が加速し、トランプ再登板への期待がたかまるが。

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