2019年10月2日 東京の社説に「『専守』変質を止めねば」「安保法成立4年」
「戦争を防ぐ抑止力としての『積極防衛』を」
東京の社説に「『専守』変質を止めねば」「安保法成立4年」が書かれている。
「安全保障関連法成立から4年がたつ。違憲の疑いが指摘されながら既成事実化が続き、『専守防衛』の変質も進む。放置していいのか、重ねて問いたい。
安全保障関連法の成立を、安倍政権が強行したのは2015年9月19日未明のことだった。あれから4年。歴代内閣が『憲法上許されない』としてきた『集団的自衛権の行使』を可能とする安保法は、当初から違憲の疑いが指摘され、全国22カ所で違憲訴訟も起きている。
しかし、安倍政権は意に介すことなく、成立後は戦争放棄、戦力不保持の憲法9条を形骸化させるような防衛政策を続けてきた。
<宇宙でも防衛力を整備>
安倍晋三首相は17日、自衛隊幹部が一堂に会する『高級幹部会同』での訓示で、先端的な軍事技術の開発競争など安全保障環境が厳しくなっているとして『新たな防衛大綱は、こうした安全保障環境の変化の中にあって、従来の延長線上にない防衛力のあるべき姿を示したものだ。できる限り早期に実行に移し、万全の体制を築く必要がある』と強調した。
防衛大綱(防衛計画の大綱)は安全保障や防衛力整備の基本方針を示すもので、今後5年間の装備品の見積もりを定めた『中期防衛力整備計画(中期防)』と合わせて昨年、改定された。
新しい防衛大綱と中期防は、宇宙・サイバー・電磁波という新たな領域利用が急速に拡大しているとして、その変化に対応するため『多次元統合防衛力』という新たな概念を設け、陸・海・空各自衛隊の統合運用を進めるとともに、新たな領域での対応能力も構築・強化する内容である。
日本を取り巻く安全保障環境の変化に応じて、防衛政策を適切に見直す必要性は認める。
<空母は米軍のため?>
しかし、特定秘密保護法に始まり、『集団的自衛権の行使』を可能にした安保法、トランプ米政権が求める高額な米国製武器の購入拡大など、安倍政権の下で、戦後日本が堅持してきた『専守防衛』政策を変質させる動きが続く。
新大綱と中期防も、そうした流れの中にあり、防衛予算の増額や自衛隊増強、日米の軍事的一体化の延長線上にあるのは、安倍首相自身が悲願とする憲法9条の『改正』なのだろう。
どこかで歯止めを掛けなければ日本は軍事大国への道を再び歩みだしてしまうのではないか。
首相は訓示で『来年、航空自衛隊に<宇宙作戦隊>を創設する。航空宇宙自衛隊への進化も、もはや夢物語ではない』とも語った。宇宙空間の利用について衆院は1969年、『平和目的に限る』と決議し、政府は『平和目的』を『非軍事』と説明してきた。
その後、2008年成立の宇宙基本法で方針転換し、防衛目的での利用を認めたが『専守防衛』の範囲を厳守すべきは当然だ。『航空宇宙自衛隊』などと喜々として語る性質のものではあるまい。
新大綱と中期防には、ヘリコプター搭載型護衛艦『いずも』型の事実上の『空母化』が明記され、20年度予算概算要求には改修費用が盛り込まれた。通常、潜水艦哨戒や輸送、救難のためのヘリコプターを搭載し、警戒監視や災害支援などに当たる『いずも』型の甲板を、短距離離陸・垂直着陸が可能な戦闘機F35B搭載できるよう、耐熱性を高めるという。
歴代内閣は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)や長距離戦略爆撃機などと同様、『攻撃型空母』の保有は許されないとの政府見解を堅持してきた。『いずも』型の改修でも『従来の政府見解には何らの変更もない』としているが、攻撃的兵器として運用されることは本当にないのか。
防衛省は『いずも』型改修後、米海兵隊のF35Bによる先行利用を想定しているという。航空自衛隊へのF35B配備に時間を要するためとしているが、これでは、米軍のための『空母化』ではないのか、という疑念が湧く。
『殴り込み』部隊とされる米海兵隊と一体運用される『いずも』型が、どうして攻撃型空母でないと言い張れるのか。
<「非軍事大国」の道こそ>
戦後日本の『専守防衛』政策は先の大戦への痛切な反省に基づく誓いでもある。他国に脅威を与えるような軍事大国にならない平和国家の歩みこそが、国際社会で高い評価と尊敬を得てきた。この国家戦略は変えるべきではない。
安倍首相は『専守防衛』に『いささかの変更もない』と言いながら、『集団的自衛権の行使』を容認し、防衛費を増やし続け、日米の軍事的一体化を進めている。
安保法を含む安倍政権の防衛政策が、憲法を逸脱して、『専守防衛』をさらに変質させることはないのか、絶えず監視し、問い続けなければならない」。
社説の主旨である「『専守』変質を止めねば」に異論がある。
2015年9月19日未明の安全保障関連法成立から4年がたつが、「集団的自衛権の限定行使」容認によって、日本と米国は守り合う関係となり、同盟は強化され、北朝鮮の核・ミサイル問題への対処に間に合った。
問題は、「専守防衛」の意味である。2018年2月14日の衆院予算委員会で安倍晋三首相は「専守防衛は純粋に防衛戦略として考えれば大変厳しい」「相手からの第1撃を事実上甘受し、国土が戦場になりかねないからである」との認識を示したが、正鵠を突いている。戦後日本の防衛の基本戦略として絶対視されている「専守防衛」の危うさを指摘したからである。相手から攻撃されたとき、初めて日本が防衛力を行使し、整備する防衛力は自衛のため必要最小限に限るというのが、専守防衛である。有事の際、国民や自衛隊員の犠牲を増やし、本土決戦に等しい誤った戦略であり、それこそ憲法違反である。国民の平和と安全を守るには、抑止力が不可避であり、侵略国の中枢をたたく、長距離巡行ミサイルの導入が必須となる。専守防衛違反にはなるが、憲法違反にはならない。戦争を防ぐ抑止力としての「積極防衛」を、となる。