2018年9月22日 日経「真相深層」「無条件の平和条約締結を提案」「ロシア、日本を『値踏み』」「中国傾斜で利用価値低下」
日経の「真相深層」に「無条件の平和条約締結を提案」「ロシア、日本を『値踏み』」「中国傾斜で利用価値低下」が書かれている。
「ロシアのプーチン大統領が12日、訪ロ中の安倍晋三首相に対し、年内に無条件で平和条約を締結することを提案した。北方四島の帰属問題の解決を平和条約の前提とする日本政府の立場に反するもので、領土問題に注力してきた首相には寝耳に水だった。突然の提案の背景では、ロシアを取り巻く地政学上の環境変化が作用している。
<今思いついた>
プーチン氏の提案は首脳会談ではなく、極東ウラジオストクで開催中の東方経済フォーラムの壇上で飛び出した。ラウンドテーブルに出席した首相のほか、中国の習近平(シー・ジンピン)国家主席ら各国首脳の面前で『事前条件を付けずに年末までに平和条約を結びましょう』と発言した。会場は拍手に沸いた。
プーチン氏は『非常に単純な考えで、いま思いついたばかり』と前置きした。だが、司会者の進行も含めて事前に準備していたと見るのが妥当だ。
プーチン氏との個人的な関係を強調し、ロシア接近を図ってきた首相ならこの発言でも対ロ関係を悪化させるリスクは低いと踏んだ面もあるだろう。真意を巡り日本政府内では様々な憶測が飛び交うが、領土問題を『ロシア国民にとって深刻で敏感な問題』と指摘するなど、日本側の早期解決への期待を冷ます意図が透ける。
両首脳は2年前、四島での共同経済活動を含む経済協力で日ロの信頼関係を深め、領土問題の進展につなげるという『新しいアプローチ』で合意した。首相は経済協力をテコに交渉進展を狙ったが、プーチン氏は常に経済よりも戦略的な観点から日本を見てきた。領土交渉で日本をつなぎ留め、米国の同盟関係の揺さぶりや対中バランスの駒として日本の価値を探ってきた側面が大きかった。
2014年にウクライナ領クリミア半島を武力により併合し、欧米と対立を深めるなかで、主要7カ国(G7)の結束を乱すために日本を利用した。首相や閣僚の度重なる訪ロはロシアが孤立していないことを世界に示し、中国をけん制する手段となった。
情勢はこの2年で大きく変わった。『米国第一』を掲げるトランプ米大統領が同盟国の利害も顧みない独断行動に走り、通商や安全保障で欧州や日本にも圧力を掛けており、米国の同盟はきしんでいる。欧州では対ロ融和を主張する勢力が台頭。対ロ制裁を主導してきたドイツのメルケル首相も8月、ロシアのクリミア併合以来初めて2国間会談のためにプーチン氏をドイツに迎えた。ロシアが孤立していないことを示す必要性は薄れた。
<「中国は同盟国」>
ロシアの対中戦略も変わりつつある。ぺスコフ大統領報道官はフォーラムと同時期に始めた中国が一部参加する大規模軍事演習について、中国を『同盟国』と呼んだ。経済力で中国に大幅に劣るロシアは『ジュニア(格下)パートナー』となることを警戒し、日本への接近でバランスを取る思惑があったが、中国傾斜が進む。
16年の米大統領選への介入などを巡る米国の対ロ経済制裁は強まっており、関係修復の糸口はつかめないままだ。プーチン氏周辺が支配する経済はかねて汚職の横行や非効率な運営により停滞する。中国頼みが苦境の打開につながるわけではないが、対米もにらみ中国への接近姿勢を強めざるをえない。
欧米の制裁対象である国営石油会社ロスネフチのセチン社長など、政権内では『中国ロビー』と呼ばれる勢力が増長している。同氏はプーチン氏に次ぐ実力者だ。中国を参加させた軍事演習は、安全保障を主導することで中国と対等な『同盟』を構築する試みとの見方もある。日本には期待していないとロシア政府筋は口をそろえる。
首相と会談を重ね、個人的な関係を築いてきたプーチン氏の今回の発言は日本の出方を探るくせ球と見る向きも日本にはある。しかし、世界秩序が大きく揺らぐなか、ロシアにとって日本の戦略的価値が低下している。領土交渉に後ろ向きな本音をのぞかせたプーチン氏が今後、首相にどこまで配慮するか見通せない」。
コラムの主旨である「日本の戦略的価値低下」は事実誤認である。プーチン大統領とトランプ大統領との仲介役は安倍晋三首相以外にいないからである。極東開発は中国ではなく日本が主体であり、日米基軸の朝鮮半島統一の延長戦上だからである。