2018年6月11日 日経「日本、包囲網維持へ全力」「会談直後トランプ氏訪日打診」
日経に「日本、包囲網維持へ全力」「会談直後トランプ氏訪日打診」が書かれている。
「日本政府は北朝鮮の非核化に向けた米朝の協議が北朝鮮ペースで進み国際社会の圧力を緩むことを警戒する。7日の日米首脳会談で非核化実現まで圧力を維持する方針を確認したい構え。12日の米朝首脳会談後にトランプ米大統領が米軍横田基地(東京都福生市など)に立ち寄るよう米政府に打診。米朝会談直後の日米首脳会談も模索する。
日本政府関係者によると、7日にワシントンで開く日米首脳会談を調整する際、トランプ氏がシンガポールでの米朝会談後に、給油で横田基地を経由するよう米側に打診した。安倍晋三首相との会談を想定。金正恩(キム・ジョンウン)委員長との会談の報告を受け、今後の北朝鮮政策をすり合わせる狙いだ。
『最大限の圧力』との言葉を今後使うことを望まないというトランプ米大統領の発言に懸念も出るなか、安倍首相は2日、大津市で開いた自民党会合で『国際社会とともに圧力をかけていく。その中で米朝首脳会談が行われることに期待したい』と語った。7日の日米首脳会談に触れ『(米朝首脳会談が)核・ミサイル問題、何よりも大切な拉致問題が前進する会談となるように全力を尽くす』と強調した。
日本政府内には、12日の首脳会談開催に向けて調整を再開した米朝のやりとりを把握するなかで、実現に懐疑的な見方もあった。北朝鮮の非核化を巡り意見の隔たりは依然として大きく、会談しても成果を出せないとの観測があったからだ。
トランプ氏が金正恩氏との会談が複数回になる可能性に言及したことで、北朝鮮に時間稼ぎの余地を残したともいえる。首相官邸の関係者は『(米国に)変な妥協をされたら困る。北朝鮮の完全な非核化が実現しない限り制裁を解除してはならない』と指摘した。
一方、小野寺五典防衛相は2日午前(日本時間同)、シンガポールで開催中のアジア安全保障会議で講演し、北朝鮮が過去に融和ムードを演出しては核・ミサイル開発への回帰を繰り返したとし『対話に応じることのみをもって、見返りを与えるべきではない』と訴えた。ただ、直後の質疑で韓国の宗永武(ソン・ヨンム)国防相は小野寺氏の発言に対し『北朝鮮を疑い続けては対話に支障が出る』と批判した。
2日付の北朝鮮の朝鮮労働党機関紙「労働新聞」は論評で『日本が<拉致問題>に執着するのは、我が国の対外的イメージを傷つけ、軍国主義の狂気を助長しようという不純な下心からだ』と非難した。
≪専門家の見方≫
<査察体制非核化のカギ>尹徳敏(ユン・ドクミン)韓国外国語大学碩座教授
米朝首脳会談では非核化で合意し、北朝鮮の大陸間弾道ミサイル(ICBM)と核弾頭の一部を移転・解体するような『ショー』が行われるかもしれない。ただ、本質は『完全で検証可能かつ不可逆的な非核化』(CVID)が実現するかだ。
北朝鮮が主張する『段階的・同時的な非核化』を受け入れてしまえば、実現は半分、遠のくといっていい。北朝鮮に時間稼ぎの口実を与え、失敗に終わった過去と同じことになるだろう。
非核化の核心は査察体制だ。(自己申告分だけでなく)いつでもどこでも査察を受け入れない限り、北朝鮮に非核化の意思はないとみるべきだ。米朝合意を受け、すぐに経済制裁を緩和してしまっては、これも非核化を遠のかせることになる。
<トランプ氏、現実見極め>平岩俊司・南山大教授
『ゆっくり』進める非核化を容認するなどトランプ大統領の発言が軟化したようにみえるが、北朝鮮の核放棄に時間がかかるのはもとより明らかで、現実を認識したということだろう。北朝鮮にとっては思惑通りだが、完全で検証可能かつ不可逆的な非核化(CVID)を求める方針は変わっておらず、米国が譲歩したわけではない。
米国は核放棄が行われるまで制裁を解除しないが、トランプ氏はその間も中韓などが北朝鮮を援助するのを容認することを示唆した。例えば開城工業団地の再開などが非核化のステップを巡る米朝間の溝を埋める落としどころになる可能性がある。日本としては、CVIDなどの譲れない一線をきちんと米国に確認していくことが重要になるだろう」。
トランプ大統領が「最大限の圧力」との言葉を今後使うことを望まないとの発言の意味は、金正恩氏が3年以内のCVIDを約束したからだと想定できる。日本からの経済援助が欲しいからである。