2018年2月13日 日経「ニュース フォーキャスト」「日韓首脳会談」(9日)「平昌後の対北朝鮮にクギ」

日経の「ニュース フォーキャスト」に「日韓首脳会談」(9日)「平昌後の対北朝鮮にクギ」が書かれている。

「2月9日、安倍晋三首相は冬季五輪の開会式に出席するため韓国の平昌を訪れ、文在寅(ムン・ジェイン)大統領と会談する。従軍慰安婦問題の最終的かつ不可逆的な解決をうたった2015年の日韓合意の履行を改めて促す。一方で、首相の視点は『平昌後』にも置かれている。冬季五輪を機に北朝鮮との対話ムードが高まった韓国に、日米韓が連携して圧力路線を堅持するようクギを刺す狙いだ。

首相が訪韓を表明したのは1月24日。五輪の開会式に先立つ文氏との会談を巡り『日韓の慰安婦合意について日本の立場をしっかりと伝え、最大限まで高めた北朝鮮への圧力を維持していく必要性を伝えたい』と記者団に説明した。かねて韓国政府から開会式への招請を受けていたものの、韓国側が日韓合意を『重大な欠陥がある』として追加措置への期待を示したことから首相は判断を留保してきた。

訪韓には熟慮の跡がうかがえる。首相は外務省に訪韓のメリットとデメリットの説明を求めてきたが、外務省内にも根強い慎重論はあった。12月末に韓国が発表した日韓合意の検証をもとに、文氏は『合意で慰安婦問題は解決できない』として元慰安婦への追加謝罪の必要性にまで言及した。日本国民の反発も強く、報道機関の世論調査ではこうした韓国の姿勢を『納得できない』とする回答が8割を超えた。

それでもこの局面で文氏との会談を決断した意義は、慰安婦問題と、核・大陸間弾道ミサイル(ICBM)の完成が迫る北朝鮮への対応を急いだことに尽きる。北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)委員長が1月1日に五輪参加への意欲を表明してから、南北対話は北朝鮮ペースで進んでいる。米韓合同軍事演習も延期が決まった。

日米は北朝鮮が事実上、敷いた路線を転換したいと考えている。平昌パラリンピックの閉会は3月18日。米軍はその後、毎年春の定例である朝鮮半島有事を想定した野外機動訓練『フォール・イーグル』と、指揮所演習『キー・リゾルブ』を実施する予定だ。

ただ、日本政府内には『北朝鮮は韓国に合同軍事演習の中止や規模縮小を働きかける』との観測がある。米国が開会式に派遣するペンス副大統領は日本に立ち寄り、7日に首相と会談する。日米が歩調をそろえ、文氏に対し『南北融和』への過度の傾斜をけん制する構図をつくれる。

韓国が『周辺4強』と位置づける米国、中国、日本、ロシアのなかで、首脳の参加は日本だけとなる見込みだ。中国は共産党序列7位の韓正(ハン・ジョン)政治局常務委員を派遣、ドーピング問題で国家として参加しないロシアは決まっていない。五輪の成功を期す文政権にとって、首相の訪韓は助け船にもなる。韓国政府は『韓日関係の未来志向的な発展につながるよう日本政府と緊密に連携していく』と歓迎の談話を出した。

今大会の日本勢は、1998年長野大会で獲得した冬季五輪過去最多のメダル10個を上回る勢いだという。首相は平昌で日本選手団を激励し、アイスホッケー女子日本代表の試合観戦も検討中だ。『選手を応援したい首相の思いもあった』(外務省幹部)

自民党内には『韓国に誤ったメッセージを与える』などと訪韓への慎重論がくすぶるが、1月下旬の日本経済新聞社の世論調査では『出席すべきだ』が55%で、『すべきでない』の33%を上回った。日韓関係には『言うべきことは言う』姿勢を貫きながら複眼的な視点でマネージしていく外交力が問われる」。

9日の日韓首脳会談のテーマは2つである。第1は日韓の慰安婦合意の履行、第2は、米韓合同演習の3月実施である。文在寅大統領が履行と実施を受け入れられるか、疑問となる。

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