2017年11月9日 産経「始動第4次安倍内閣」田村秀雄・編集委員「技術革新の波 脱デフレ待ったなし」

産経の「始動第4次安倍内閣」に田村秀雄・編集委員が「技術革新の波 脱デフレ待ったなし」が書かれている。

「世界は情報技術(IT)を原動力とするイノベーション(技術革新)の巨大なうねりが沸き起こっている。いまだにデフレから脱出できていない日本は乗り切れるのか。

5日閉幕する東京モーターショー。花形はヒトがハンドルを握らなくても人工知能(AI)で自在に動き、安全に止まる自動運転車だ。機械部品の塊のエンジンが電動モーターに置き換わる電気自動車(EV)になると、AIとの相性はさらによくなる。ITは最大の製造業部門。自動車を取り込んで、新たなるイノベーションの壮大な未来を描き出す。

イノベーションは創造と同時に、破壊を伴う。EVはエンジン、変速機がなくなり、付加価値の大きい部品1万点以上が不要になるという。モーター、電池など一式のユニットさえあれば、プラモデル感覚で、組み立てられるので、新規参入による競争も激化する。さらにネットを通じてカーシェアリングが普及すれば、需要台数も減る。

広大な自動車部品・材料の裾野を強みにしてきた日本の製造業が揺らぐ。半面で、電子・電機やIT業界のチャンスになるはずだが、中枢部品になる半導体の国際競争力は米国にはるか及ばないし、韓国にも劣る。背後からは中国画国家総ぐるみで追い上げる。

『中国に招かれて、技術を紹介しようとすると中国人ではなく、現地企業にスカウトされた日本の技術者に取り囲まれた』とは、ある画像処理半導体ベンチャーのトップの体験だ。

グローバルな自由化の波に乗って海外で稼いできた日本企業には逆風が吹く。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の米国離脱を機に、世界の自由貿易体制は揺らぎ、米国を筆頭に『自国産業ファースト(最優先)』がまかり通るからだ。先の中国共産党大会で独裁的な権力基盤を固めた習近平国家主席の『チャイナ・ファースト』主義は際だつ。クルマのEV化を図る習氏の一言で、世界最大のEV市場、中国に向かって世界の有力メーカーが技術を引っ提げて北京詣でを競っている。

日本はどうすべきか。安倍晋三首相は『改革、改革あるのみ』と、アベノミクスの進化に意気込む。少子高齢化など、これまで放置されてきた国内の経済問題解決を最優先し、イノベーションを担う民間の企業と人材を政府が支えていく方向性は極めて正しい。問題は、デフレ圧力がいまだ去らないことだ。

端的に言えば、日銀がカネを年間80兆円追加発行するのに、国内総生産(GDP)は6兆円増にとどまる。その代わり、使われないカネ、つまり企業の利益準備金と家計の現預金がそれぞれ20兆円以上増えるのが今の日本の経済だ。

国内物価が今後も下がり続けていくという予想がある限り、家計は消費を控えるので内需が増えない。企業は内需の伸びの低さを見て設備投資をためらう。企業はおのずと外需を重視し、輸出や海外生産による収益に依存していく。

アベノミクスの『第1の矢』である日銀の異次元金融緩和に伴う円安は輸出企業の収益をかさ上げし、それが株価上昇をもたらしてきたのだが、デフレ解解消の決め手にはならない。

円相場は米金利動向など外部環境次第で円高に振れるから、企業は賃上げや設備投資に慎重になる。増えた収益の多くは内部留保に回る。金融機関は融資需要がないために、日銀から供給される資金の大半を日銀当座預金に留め置く始末だ。異次元緩和策は株式など資産市場を潤しても、われわれが暮らす実体経済の恩恵はわずかだ。内需が停滞するなら、イノベーションの巨大な波に乗れるはずはなく、おぼれてしまう。

金融偏重の限界は明らかである以上、財政の役割はかつてなく重大だ。安倍首相は衆院選挙中、2年後には予定通り消費税率を10%に引き上げ、増税に伴う増収分の約半分を社会保障と子育て・教育支援に回すと言明した。増税しても家計に一部を還元すれば、デフレ圧力が和らぐという論法だが、消費税率を8%に引き上げた後の消費税増収分のうち43%相当が社会保障財源に充当されている。

結果はデフレ再発だ。還元率をわずかに増やしたところで、デフレ促進のリスクを回避できるだろうか。幸い、消費税率再引き上げの最終決断までまだ1年以上の時間が残されている。安倍政権は脱デフレを最優先するアベノミクスの原点に立ち返って、増税の可否を改めて熟考すべきではないか」。

デフレ脱却未だならずである。アベノミクスは脱デフレ最優先であるから、19年10月からの消費税率10%引き上げは凍結すべきとなるが。内需低迷の元凶が14年4月からの消費税率8%引き上げにあるからだ。

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