2017年9月4日 日経 「真相深層」に「北朝鮮にプーチン氏の影」「長引く米ロ対立、余波深刻」「ICBM開発技術 流出黙認の疑惑」
日経の「真相深層」に「北朝鮮にプーチン氏の影」「長引く米ロ対立、余波深刻」「ICBM開発技術 流出黙認の疑惑」が書かれている。
「北朝鮮は7月、米本土を射程に収める大陸間弾道ミサイル(ICBM)を試射し、米内陸部に届く性能を示した。このICBMに使われたエンジンがウクライナの工場で生産された旧ソ連製だったとの疑惑が浮上。ウクライナとロシアは関与を否定。それぞれが流出させたと非難するが、背後にロシアのプーチン大統領の影が見え隠れする。
疑惑の火付け役となったのは英シンクタンク国際戦略研究所のミサイル専門家、マイケル・エレマン氏だ。8月発表の報告書で北朝鮮がウクライナの国営企業で生産された旧ソ連の液体燃料式エンジンの改良型を入手した可能性を指摘した。
<闇市場を経由か>
近年、中距離弾道ミサイル(IRBM)の打ち上げにもたびたび失敗していた北朝鮮が、ミサイル技術を飛躍させた謎を解き明かした。ICBMの開発は数十年の時間と膨大な資金が必要。保有するのは米ロ中印とイスラエルにとどまる。
旧ソ連の軍事技術の多くは1991年の国家解体後の混乱で、中国など新興国に流出した経緯がある。ロシアとウクライナの軍事専門家は『多くの旧ソ連の技術が北朝鮮のICBM開発に使われている』との見方でほぼ一致している。
問題は流出の時期と経緯だ。エレマン氏は『過去2年以内にウクライナからロシアを経由し鉄道で北朝鮮に持ち込まれた可能性が高い』とみる。
ウクライナは2014年春に親欧米派が政権をとった政変後、対ロ関係が急激に悪化した。取引先のロシアから受注を打ち切られた国営企業の経営は行き詰まり、給与の遅配も長期化。技術や専門家の国外流出が起きやすい環境にあった。
ただ、もっと前にICBMの技術情報が北朝鮮に流れていたとの分析もある。ウクライナでは11年、在ベラルーシ北朝鮮貿易代表部員2人がミサイル関連技術を盗み出そうとしたとして逮捕された。ソ連時代からミサイルを開発してきたユージュノエ設計局の主任設計者は『液体燃料式エンジンは極めて複雑で、設計図を手にしても生産には10年かかる』という。
北朝鮮は16年のIRBMの打ち上げで、大気圏外から目標へ突入する際の弾頭の耐熱技術を大幅に進歩させたとされる。必要な関連技術が整うのを待って『長く秘密裏に準備していたICBM開発を加速させた可能性もある』(ロシアに駐在する欧州の武官)。
<擁護姿勢を示す>
ミサイル技術は闇市場を経由して北朝鮮に流出した公算が大きい。ロシア、ウクライナはともに行政の腐敗が深刻で、機密情報を売りさばく犯罪集団から標的とされてきた。非政府組織がまとめた世界176カ国・地域の行政のクリーン度ランキング(16年)で、両国は131位と劣悪だ。
ウクライナの親欧米政権は疑惑報道を受け、関与を否定する調査結果をいち早く公表した。米国を後ろ盾とするウクライナが北朝鮮を支援する動機は乏しく『一部の腐敗官僚の犯罪があったとしても、政府の支援はありえない』(同国グローバル研究所のワジム・カラショフ氏)とされる。
一方、ロシアのプーチン政権にはICBM関連技術の北朝鮮への流出をあえて黙認したとの疑惑がつきまとう。ロシアはロケット燃料の生産など幅広い関連技術を持ち、米国の制裁圧力に苦しむ北朝鮮を擁護する姿勢をみせているためだ。
プーチン大統領は6月に『小国は(米国から)独立や安全、主権を守るためには核兵器保有以外に方法がない』と述べ、核開発を進める北朝鮮の立場に理解を示した。5月にはロ朝間の定期航路の運航を始めた。西側外交筋は『プーチン氏は北朝鮮問題で米国を手いっぱいにし、手薄になった中東で影響力を強化している』と分析する。
プーチン氏の意図がどこにあろうと、確かなのは長引く米ロ対立の悪影響が北朝鮮のミサイル問題に及んでいることだ。ロシアの著名な軍事専門家ユーリ・フョードロフ氏は『8月29日に発射され、日本上空を通ったミサイルのエンジンにもロシアが提供した旧ソ連の技術が使われている可能性が高い』と明かした」。
「北朝鮮にプーチン氏の影」は正鵠を突いている。ICBM関連技術の北朝鮮への流出の黙認である。北朝鮮のミサイル技術の飛躍的発展は、プーチン氏の支援によるものである。プーチン氏との蜜月である安倍晋三首相の出番である。