2017年1月26日 朝日「トランプ時代の世界どう見るか」 フレッド・バーグステン・米ピーターソン国際研究所(PIIE)名誉所長 「TPP実現 まだ十分可能」

朝日の「トランプ時代の世界どう見るか」で、フレッド・バーグステン・米ピーターソン国際研究所(PIIE)名誉所長が「TPP実現 まだ十分可能」を述べている。

「現時点では、トランプ大統領が実際に何をやるかはまだわからない。財政刺激策など、世界経済を助けることも多く言っているが、貿易や移民政策では大きな損害を与える政策も主張している。米国の制度には、多くのチェック・アンド・バランス(抑制と均衡)がある。共和党が議会で多数派だが、全てトランプ氏に賛成するわけではない。市場、他国からの制約もあり、見極めが必要だ。

米国の世界での優位性は、この数十年、ゆっくり低下している。それは米国の弱さというより、新しい勢力が台頭し、世界経済、政治の力が分散しているからだ。『パックスアメリカーナ(米国による平和)』という言葉は、米国の優位性だけによるものではなく、日本や欧州などの同盟国との協力関係が十分強いものになっているからだ。

環太平洋経済連携協定(TPP)の実現は、まだ十分可能だと考える。オバマ前大統領は、中国にアジアで自由な手綱を得させないという外交政策上の理由から、TPPへの参加を決めた。トランプ氏は、明らかに中国を主要なライバル、もしくは脅威と見ている。両者のスタートラインはとても似ている。

またトランプ氏が掲げる政策の実行には、議会の共和党幹部の協力が必要だ。そのためには、TPPを支持する彼らの要求にも応じる必要がある。

トランプ氏は、日本が重要な同盟国だと理解するだろう。外交や国際関係の知識が少ない分、歴代の多くの大統領よりも主要な同盟国の影響を受けやすいのかもしれない。安倍(晋三)首相が他国の首脳に先駆けてトランプ氏と会談したのは喜ばしい。日本はトランプ氏を、より建設的な方向に導く重要な国の一つになりうる。

ただトランプ氏が最後までTPPに反対し続け、日米の二国間協定を提案した場合には、真剣に検討すべきだ。北米自由貿易協定(NAFTA)は、1980年代後半の米カナダの二国間協定から始まった。欧州連合(EU)も50年代初めの独仏の二国間協定から始まった。二国間協定を強いられても、多国間協定の可能性は消えない。

トランプ氏は貿易赤字を減らすと主張するが、彼が掲げる政策は貿易赤字と相当増やすだろう。赤字削減のために保護貿易的な政策への誘惑に駆られるだろうが、他国からの報復措置や米国経済への悪影響があるため、機能しないと遅かれ早かれ気づく。最終的には、(ドル安を招いた)プラザ合意の第2弾のような、為替政策で何等かの行動に出る可能性も十分ある」。

「TPP実現まだ十分可能」は、正論である。トランプ政策の実行には、TPPを支持する共和党幹部との取引が必須となるからである。共和党の基本政策であるTPPに収れんせざるを得ない。

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