2017年1月26日 日経「米財政・保護主義を注視」「市場、荒い値動き懸念」「円安・株高の反動も」

日経に「米財政・保護主義を注視」「市場、荒い値動き懸念」「円安・株高の反動も」が書かれている。

「トランプ米大統領の就任を受け、金融市場は財政拡張による経済対策や保護主義的な政策が実際にどう進むかを探る展開となる。20日の就任演説や公表された政策は想定内で、経済対策の踏み込んだ発言を待っていた市場には肩すかしだった。期待先行で進んできた円安・株高の反動と、材料次第で荒い値動きになるリスクへの懸念が高まっている。

就任初日である前週末の米国外国為替市場で、円相場は1ドル=114円台後半で取引を終えた。ここ数日は115円程度で推移しており、トランプ氏の就任演説などを受けてやや円高に振れた。昨年11月の大統領選時の101円程度に比べ約13円も円安水準にあるが、勢いはそがれつつある。

トランプ氏はかねて財政出動によるインフラ投資を主張してきた。演説では『このすばらしい国家全域に新しい道、高速道路、橋、空港、トンネル、鉄道をつくる』と述べるにとどまり、投資家にとっては『新味に乏しい』内容だったようだ。

市場の関心は2月に予定される予算教書の内容などに移っている。歳出は議会の権限で、与党共和党との議論が必要だ。『もともと共和党は財政拡大に慎重で、トランプ氏が同じく主張する減税より調整が難しい』(国内銀行)とみられており、調整が難航する可能性もある。

就任式の後には環太平洋経済連携協定(TPP)の離脱や北米自由貿易協定(NAFTA)の再交渉という政策方針が公表された。米国が保護主義を強めれば世界経済の停滞につながりかねないとの見方から『円相場は3月末に1ドル=112円まで上昇する』(みずほ証券の山本雅文氏)との声が出ている。

20日の米国株式市場ではダウ工業株30種平均が6日ぶりに反発した。想定を超える悪材料は出なかったことから、週明けの東京市場には『米経済指標や企業業績の好転に着目した資金が戻って来る可能性が高い』(ピクテ投信投資顧問の松元浩氏)。日経平均株価は1万9000円台で値固めする展開になりそうだ。

株式市場ではトランプ氏が実際に景気刺激策を打ち出し、北米景気がさらに上向けば、自動車や機械といった主力輸出企業の業績が改善するとの期待が先行。相場の水準は大きく押し上げられてきた。目先はトランプ氏の発言や政権の動向次第で値動きが不安定になりかねないと警戒する声も広がっている。

JPモルガン・アセット・マネジメントの重見吉徳氏は『政策の具体策や実現の可能性を見極めるのは時間がかかる。4月まで株式市場はもみ合う展開になる』と指摘している。

<「蜜月」いつまで続く?米大統領選後株価、民主、共和上回る>

トランプラリーは続くのか。第2次世界大戦後の歴代米大統領の投票日から翌年3月までの米国株の動向を調べたところ、民主党の大統領の平均が小幅に共和党を上回った。米国では新政権発足後100日間は期待感を支えに株価が比較的崩れにくく「蜜月(ハネムーン)期間」と称される。

大統領選の投開票日から翌年3月末までの騰落率を集計し、政党ごとに単純平均した。大統領別でみたトップはケネディ氏で上昇率は約18%だった。三菱UFJモルガン・スタンレー証券の三浦洋平投資ストラテジストは『米国経済の環境や政策期待が影響する』と話す。民主党は大きな政府を志向する例が多く、積極財政への期待が背景にありそうだ。

共和党で好調だったのはレーガン氏だ。減税や規制撤廃を掲げた『レーガノミクス』は巨額の財政赤字と貿易赤字を生んだが、90年代の米国経済繁栄の土台を築いた。市場では『減税などトランプ氏の政策と類似点は多い』(武者リサーチの武者陵司代表)と期待する声が多い。トランプ氏の就任日までの上昇率は6%だった。

自由貿易を擁護するレーガン氏に対し、トランプ氏は保護主義を前面に打ち出している。ドイツ証券の村木正雄グローバル金融ストラテジストは『大統領選直後のご祝儀相場が終われば市場は政策を見極める段階に移り、一本調子に上昇しづらくなる』と話す。

≪関係者の見方≫

<為替、緩やかな反動で円高へ>山本雅文氏(みずほ証券チーフ為替ストラテジスト)

トランプ大統領の就任演説や直後に公表した通商などの政策方針は、経済対策への具体的な言及はなく保護主義色が目立った。経済対策は議会との調整が必要で明確な姿が見えてくるのは今年半ば以降だ。保護主義は市場のリスク回避姿勢を強めるなどして円高圧力となりやすい。

円相場は大統領選後にトランプ氏の政策への思惑から大幅な円安に振れてきた。しかし具体的な経済対策が当面見えにくい状況が続くとすれば、緩やかな反動が見込まれる。円は3月末に1ドル=112円まで上昇するとみる。

<日経平均、景気刺激策で2万円も>松元浩氏(ピクテ投信投資顧問常務執行役員)

就任演説の内容や環太平洋経済連携協定(TPP)からの離脱表明は想定内で、市場も冷静に受け止めた。米経済の好調さを背景にドル高、金利高、日米株高の基調は崩れない。相場は期待から現実を見極める局面に入っており、トランプ氏は支持率が下がらないように減税などで踏み込んだ具体策を出してくるだろう。

米新政権が打ち出す景気刺激策の影響を織り込む過程で、日経平均株価は2万円を目指す。ただ今週から本格化する主要企業の決算発表で今期業績見通しの上方修正が少ないと、到達に時間がかかる可能性がある。

<NY株、政策見極めに時間必要>チャールズ・ロットブラット氏(米個人投資家協会副会長)

トランプ大統領の政策について、きちんと市場が評価するには数カ月を要するだろう。これまで期待が先行して株価は上げてきたが、多くの市場参加者は、3月に期限切れとなる連邦債務上限の適用凍結法案の行方などを見極めたいと考えるようになっている。

ダウ工業株30種平均は2万ドルの大台を前に足踏みしている。目先はトランプ氏の政策より23日の週から本格化する四半期決算に関心が集まる。好業績がはっきりすればダウ平均は2万ドルを試す展開になるだろう」。

就任演説の内容やTPPからの離脱表明は想定内であり市場は冷静に受け止めたから、ドル高、金利高、日米株高の基調は変わらない。トランプ政権は直ぐの支持率上昇を狙って減税策に踏み込むから、日経平均は2万円を目指すことになるが。

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