2016年10月23日 読売「7月参院選、東京・高松高裁は『合憲』」「1票格差、縮小を評価」
読売に「7月参院選、東京・高松高裁は『合憲』」「1票格差、縮小を評価」が書かれている。
「『1票の格差』が最大3・08倍だった7月の参院選挙区選について、東京高裁(林昭彦裁判長)と高松高裁(吉田肇裁判長)は18日、『合憲』と判断し、選挙無効の請求を棄却する判決を言い渡した。隣り合う県の選挙区を統合する『合区』が初めて導入され、格差が大幅に縮小したことを評価した。この選挙に対しては、すでに二つの高裁支部が『違憲状態』の判決を出していて、4高裁・支部で司法判断が半々に分かれた。
二つの弁護士グループは、全国8高裁・6支部で計16件の訴訟を起こしており、11月8日までに判決が出そろう。その後、最高裁が統一判断を示すことになる。
最大格差が5・00倍だった2010年参院選、4・77倍だった13年参院選では、いずれも最高裁が『違憲状態』と判断し、都道府県単位の選挙区割りの見直しなど抜本的な制度改革を求めた。国会は15年成立の改正公職選挙法で、『鳥取・島根』『徳島・高知』の各選挙区を統合する『合区』を初めて導入するなど定数を『10増10減』して格差を大幅に縮めていた。
この日、東京高裁は、『憲法はどのような選挙制度にするかの決定を国会の裁量にゆだねており、投票価値の平等は選挙制度の仕組みを決定する唯一、絶対の基準ではない』と、国会の自主的な取り組みを尊重する考え方を示した。
その上で、今回の選挙において全45選挙区中、議員1人当たりの有権者数が最少だった福井県と比較すると、最多の埼玉県は格差が3・08倍だったが、その他はいずれも3倍未満で、23選挙区は2倍未満だったと指摘した。また、数十年間維持されていた5倍前後の最大格差が大幅に縮小されたことなどから、『違憲の問題が生じる程度の著しい不平等状態にあると評価できない』と結論づけた。
高松高裁判決も、15年改正について『最高裁の指摘を踏まえ、違憲状態を緊急に是正する立法措置としてはやむを得なかった』と述べ、合憲とした。
今月14日の広島高裁岡山支部判決と、17日の名古屋高裁金沢支部判決は、『投票価値の不均衡は看過し得ない程度に達している』などと言及し、違憲状態と判断していた。
≪選挙制度、国会の裁量重視≫
東京、高松両高裁は18日、『1票の格差』を合憲と判断した。参院の選挙制度を巡る過去の経緯を踏まえ、初の『合区』に踏み切った国会の取り組みに相応の評価を与えた判断といえる。
違憲状態とした広島高裁岡山支部と名古屋高裁金沢支部の二つの判決は、参院選では格差を2倍未満に抑えるとした区割り基準が設けられていることなどに触れ、今回の参院選の最大格差3・08倍は『著しい不平等状態』にあたると判断した。任期や役割の異なる衆参の選挙制度を同列に論じている上、なぜ3倍を超えたことが許されないのかについて、明確な理由は示されていなかった。
これに対し、東京、高松両高裁はまず、前回選挙まで数十年にわたって5倍前後の格差が続いていた中で、前回の4・77倍から大幅に格差が縮小したことを評価した。高松高裁は、戦後間もなく参院選が始まった時点で2・62倍の格差だったことにも触れ、それと『大幅には異ならない』と指摘した。
いずれも、格差が違憲とまではいえないことについて、過去の数字から一定の根拠を示した。最高裁が最近まで5倍前後の格差を容認してきたことも整合しているといえるだろう。
また、両高裁は、選挙制度の仕組みを決めるのは『国会の裁量にゆだねられている』とし、『投票価値の平等は、選挙制度を決定する唯一、絶対の基準とはならない』と言及した上で 地域代表的な側面のある参院議員の特殊性を考慮。早期の是正が求められていた中で、一部でも合区に踏み切ったことを重視した判断となった。
ただ、合憲とした二つの判決も、現状を全面的に肯定したわけではなく、高松高裁は、『なお継続的な見直しと是正を要する』とも述べた。最終的には最高裁が統一判断を示すが、国会はより妥当な選挙制度を追求する不断の努力を怠ってはならない」。
東京・高松両高裁は18日、「1票の格差」を合憲と判断した。選挙制度の仕組みを決めるのは「国会の裁量に委ねられている」とし、初の合区に踏み切り、最大格差を3・08倍にした国会の取り組みを評価したからである。19日時点で、合憲3件、違憲状態が4件となっているが、問題は最高裁の統一判断がどうなるか、である。