2016年9月12日 日経「米『アジア重視』正念場」「オバマ大統領、最後の訪問終了」「TPP承認不透明」「北朝鮮も不安定要因のまま」

日経に「米『アジア重視』正念場」「オバマ大統領、最後の訪問終了」「TPP承認不透明」「北朝鮮も不安定要因のまま」が書かれている。

「オバマ米大統領は8日、任期中の最後となるアジア訪問を終えた。自らが掲げるアジア重視戦略の総仕上げとしたかったが、その中核と位置づける環太平洋経済連携協定(TPP)は米議会の反対で承認の見通しが立っていない。このまま戦略の骨格を欠くような事態に陥れば、オバマ氏の外交目標は空洞化したまま幕を閉じる恐れがある。

『(11月の)米大統領選が終わればTPPに関心が戻る。批准されると信じる』。オバマ氏は7日のラオスでの対話集会で、TPPの早期発効に必要な議会承認の任期中の獲得へ決意を示した。6日の演説でもTPPが頓挫すれば『米国の指導力への疑念が拡大する』と危機感をあおった。

オバマ氏のアジア重視戦略の念頭には軍事、経済で台頭する中国の存在がある。TPPは米国や日本などが主導している高い基準の通商ルールづくり。『もし(TPPが)承認できなければ、中国のような国がルールを書くことになる』と、オバマ氏は語っている。

TPP発効は日本やオーストラリア、フィリピンなど米国の同盟国との連携だけでなく、シンガポールやベトナムなど中国の周辺国との関係深化につながる。東南アジア諸国連合(ASEAN)のうちマレーシア、ブルネイなど4カ国がTPP交渉に参加している。共通の価値観を持つ国と経済圏を築き、安全保障上の抑止力向上にもつなげられるとの見立てだ。

ただ、大統領選の民主党候補、ヒラリー・クリントン前米国務長官(68)も、米共和党候補、不動産王ドナルド・トランプ氏(70)もTPPに反対の姿勢だ。長官時代、TPPを推進していたクリントン氏だが、反対の立場に転じた。クリントン氏は『現在も反対だが、選挙後も大統領になっても反対する』とまで言い切っている。

この発言は『TPPの問題はオバマ氏が任期中に責任を持って完結させてほしい』との意味を包含するとみられ、オバマ氏が11月の米大統領選後から自身が退任する来年1月までの『レームダック・セッション(日程消化会期)』でTPP承認に言及する背景だ。

レームダック・セッションでTPPが承認される可能性を会期から逆算してみると、厳しい状況が浮かび上がる。レームダック・セッションでどの案件を最優先課題に据えるかを巡り、オバマ氏と民主党で意見が割れており、民主党には連邦最高裁判事の死去に伴う後任人事の承認を最優先すべきだとの声が多い。

TPP以外でも、オバマ氏のアジア外交は奏功しているとは言いがたいのが実情だ。中国による南シナ海、東シナ海での挑発行為の継続は、米国の同盟国や友好国の不安を広げている。

対北朝鮮でも同様。国際社会の警告を無視した核実験や弾道ミサイル発射で、弾道ミサイルに搭載可能な核の小型化に成功しつつあるとの情報もある。中国や北朝鮮はアジアの安全保障の不安定要因になっており、その点だけでもオバマ氏のアジア外交に対して厳しい見方も根強い。

アジア重視という外交目標を掲げたオバマ氏だが、今回の一連のアジア訪問では期待されたほどの成果はなかったとの評価がもっぱらだ。来年1月までにTPPの議会承認にこぎつけられるか。これがオバマ氏のアジア重視戦略の評価そのものになる可能性もある」。

オバマ米大統領のアジア重視戦略の核心であるTPPの議会承認が自らが退任する1月までにこぎつけられるか、である。こぎつけることが最大のレガシ―となるが。そのためにも、今国会でのTPP承認が必須となる。

 

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