読売の社説に「福島の除染計画」「『１ミリ・シーベルト』への拘りを捨てたい」が書かれている。

「避難生活が続く住民の帰還を見据え、効率的な除染を迅速に進めてもらいたい。東京電力福島第一原子力発電所周辺の除染が思うように進まず、環境省が計画の見直しを発表した。　

環境省直轄で除染を実施している１１市町村のうち、７市町村で当初予定の来年３月末までに作業を終えるめどが立たないためだ。年内にも市町村ごとに新たな計画を策定するという。　

除染対象の土地所有者が各地に避難し、同意の取り付けが難航している。はぎ取った表土などを保管する仮置き場の設置に対し、住民の理解が得られない。仮置き場の汚染土を集約して保管する中間貯蔵施設の建設も見通せない。

こうした現状を考えれば、計画見直しはやむを得ない面がある。環境省は住民に粘り強く説明し、協力を得ていかねばならない。除染の効率化も欠かせない。表土の削り取りや路面洗浄などの作業に最新機材を投入し、スピードアップを図る必要がある。

今回の計画見直しで、環境省は森林除染の対象を広げた。除染拡大を求める住民の声を受けたものだ。だが、早期帰還のためには、森林の除染は極力、住民の生活圏周辺に限定すべきだ。

大規模に森林除染を行えば、終了時期が見通せず、除染費用は際限なく膨らむ。大量の汚染土の置き場を確保するのも困難だ。草木を広範囲に取り除けば、土砂災害を引き起こす危険もある。

一方、１１市町村のうち、田村市では、除染が完了した。楢葉町、大熊町、川内村では今年度内に作業を終える見通しだ。今後は、住民の生活再建を視野に入れたインフラ整備なども進めていくことが求められる。政府は、住民帰還の目安となる年間被爆線量を『２０ミリ・シーベルト以下』としている。国際放射線防護委員会の提言に沿った数値だ。その上で、長期的には『年間１ミリ・シーベルト以下』に下げる方針だ。しかし、住民の中には、直ちに１ミリ・シーベルト以下にするよう拘る声が依然、少なくない。

人間は宇宙や大地から放射線を浴びて生活している。病院のＣＴ検査では、１回の被爆線量が約８ミリ・シーベルトになることがある。専門家は、広島と長崎の被爆者に対する追跡調査の結果、積算線量が１００ミリ・シーベルト以下の被爆では、がんとの因果関係は認められていないと指摘する。政府は、放射能の正しい情報を周知していくことが大切だ」。

社説の主旨である「『１ミリ・シーベルト』への拘りを捨てたい」は、正論である。政府は住民帰還の目安となる年間被曝線量を「２０ミリ・シーベルト以下」とし、長期的には『年間１ミリ・シーベルト以下」に下げる方針だが、住民の中には、直ちに、１ミリ・シーベルト以下にするよう拘る声が多いからであり、帰還が遅れる最大の要因となっているからである。放射能の正しい情報の周知徹底が急務である