2016年4月29日 朝日「どうする消費増税」「耕論」片岡剛士・三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員 「相続・資産課税の強化を」
「消費税凍結には衆参同日選が必須」
朝日の「どうする消費増税」「耕論」に片岡剛士・三菱UFJリサーチ&コンサルティング主任研究員が「相続・資産課税の強化を」述べている。
「消費税増税は、延期ではなく凍結すべきだと思っています。上げないということを、一刻も早く表明すべきです。今後、熊本地震の経済的影響も懸念されるなかで、増税は凍結する必要があります。
2014年4月の消費税増税以降の家計消費の動きを見ると、増税直後に一気に落ち込み、そこから戻らない。V字回復せず、L字のような動きで推移している。デフレ脱却の途上で増税したことのダメージが非常に大きかった。
安倍首相は、リーマン・ショック級のことがなければ17年4月に必ず増税を行うと言ってきました。家計の視点では、将来さらに消費の際の負担が増えるわけだから、消費を手控えて貯蓄しようということになる。家計消費が伸びない原因でしょう。
増税を再延期して、その間に経済対策をやると言っても、これも将来の増税が織り込まれている以上、同じことを繰り返すだけです。延期では問題は解決しません。増税そのものを凍結すべきです。
財政健全化には増税が不可欠と言われますが、日本の場合、90年から12年までの名目成長率は平均わずか0・3%でした。その結果、税収が増えず、財政赤字が累積して長期債務残高が増えた。増税しなかったからではなく、成長率が低かったから財政健全化できなかったのです。
デフレから脱却し、名目成長率が上がれば、税収は増える。アベノミクスが始まった13年度の一般会計税収は47兆円でしたが、名目成長率が上がったのに伴い、16年度には予算学で57・6兆円まで増えています。財政健全化の指標である長期債務残高の国内総生産(GDP)比も、15年度までは増え続けていたのが、16年度には緩やかに減少に転じる見通しです。
消費税増税の可否は、景気のみではなく、これからの望ましい再分配とは何かという観点からも考えるべきです。消費税には逆進性があり、低所得層ほど痛みが大きい。社会保障は高齢者や弱者に分配するものなのに、弱者に負担の大きい税を財源に充てるというのは矛盾しています。
むしろ相続税や資産課税を強化し、格差を縮小させるべきです。消費税に比べて微税コストはかかるでしょうが、相続税は亡くなる方が増えれば課税ベースが自動的に拡大する。社会保障財源は、名目成長率を高めて税収を増やすことに加え、少子高齢化に伴って税収が自然に増えるような枠組みで対応すべきです。
消費税はこれ以上上げるべきではない。むしろ消費税率を5%に戻すべきです。安倍政権にはできないのかもしれませんが、野党は低中所得層の痛みを緩和するため、ぜひ消費税減税を掲げてほしい。それが有権者に一番届くはずだし、日本経済にとっても必要です」。
氏が言う「延期では問題は解決しません。増税そのものを凍結すべきです」は、正論である。増税先送りでは、家計消費を手控えて、貯蓄しようとするから、家計消費は低迷したままだからである。2014年4月の消費税増税以降、家計消費は一挙に落ち込み、V字回復せず、L字型のままだからである。
問題は、消費増税凍結は、安倍首相の政権公約であるリーマン・ショック級のことがなければ17年4月に必ず増税を行うを反故にすることだから、国民に必ず信を問わねばならないことであることだ。解散・総選挙である。衆参同日選を為すべきなのである。4・14熊本地震があっても、である。失敗したといわれるアベノミクスを救うために、である。安倍晋三首相は、熊本地震の早期復旧・復興のメドを付け、7月中の衆参同日選に打って出るが。