2016年4月4日 東京「日本の岐路」「3月をつづる」 金井辰樹・政治部長「消費税、同日選、憲法」

「消費税再増税凍結・憲法9条2項改正の是非を争点とした同日選」

東京の「日本の岐路」「3月をつづる」に、金井辰樹・政治部長が「消費税、同日選、憲法」を書いている。

「安全保障関連法が施行された翌30日、自民、公明の与党は野党提出の安保法廃止法案を今国会で審議しないと決めた。安保法は日本が戦後続けてきた専守防衛を大きく変質させるものだ。しかし3月の政治は、この問題は脇に置かれ『消費税』『同日選』そして『憲法』をめぐる憶測や駆け引きばかりが目立った。三つは本来は全く異質のものだが、今はそれぞれが複雑にからみあっている。

本紙は19日付の朝刊で、安倍晋三首相が消費税率引き上げの再延期を検討し、あわせて衆参同日選を視野に入れていると報じた。消費税は来年4月に10%に引き上げられることになっている。安倍首相は『リーマン・ショック級の事態にならない限り予定通り引き上げる』と繰り返すが『世界経済が不透明さを増している。経済が失速しては元も子もなくなる』とも述べている。増税の是非は5月末ごろまでに決断することになる。

仮に増税延期を決断する場合、衆院解散の可能性が高まる。増税の予定を変更するのは大きな政策転換だから、その決断をする時は国民に信を問うという考えだ。安倍首相は2014年11月に消費税増税の延期を発表した時も、その決断の信を問うとして衆院を解散した。もう一度、延期する場合も同じ決断をすると考えるのは自然なことだ。その場合、7月の参院選と同日選となる可能性が高い。

自民党内には選挙対策上、消費税増税を延期してほしいという待望論もある。共同通信社が3月26、27の両日に行った世論調査では消費税率を予定通り10%に引き上げることについて反対が64・6%と多数を占めた。増税を延期すれば衆院解散・同日選。同日選に勝つためには増税延期。二つのテーマは事実上、一体化している。

ここに『憲法』もかかわってくる。安倍首相の任期は自民党の党則を変えない限り党総裁任期の18年9月まで。任期内の改憲を目指す安倍首相に残された時間は、2年半しかない。改憲するにはまず、衆参でそれぞれ3分の2以上の賛成で可決して発議し、その上で国民投票により投票者の過半数の賛成で承認される必要がある。

自民、公明、おおさか維新の3党を改憲勢力と位置づけると衆院は3分の2を確保しているが参院は足りない。同日選を仕掛け野党共闘を崩せば、衆院だけでなく参院でも3分の2を確保できる、という読みが自民党内にある。

改憲が発議された後に政治日程にのぼる国民投票とも関連してくる。国民投票は改憲の是非だけを問うものだが、時の政権の支持と無関係ではない。『安倍首相が好きだから賛成』『支持しないから反』」という人も少なからず出てくるだろう。だから安倍首相としては衆院選や参院選の時と同様に国民投票の時も高い支持を維持したい。そのためには反対の多い増税延期は有効な手段だ。

異質の課題が関連しあって決まることは政治の世界ではさほど珍しくはない。ただ、そんな時は往々にして国民不在の駆け引きで決定が下される。今回も財政や国家観から離れ、党利党略に傾いている印象はぬぐえない」。

コラムの結語である「異質の課題が関連しあって決まることは政治の世界ではさほど珍しくはない。ただ、そんな時は往々にして国民不在の駆け引きで決定が下される。今回も財政や国家観から離れ、党利党略に傾いている印象はぬぐえない」に、異論がある。

安倍晋三首相が、消費税再増税凍結の是非と憲法改正の是非について国民の信を問う解散・総選挙を7月の参院選にぶつける衆参同日選の決断が、国民不在の駆け引きであり、党利党略か、である。違うであろう。国民の平和と安全、財産を守るための決断である。

問題は、2つとも国益を守るために喫緊の課題であることだ。憲法改正の要諦は9条2項の改正であり、国民の平和と安全を守る要である自衛隊の存在を憲法に明記することであり、消費税再増税凍結は、14年4月からの消費増税がGDPの6割を占める個人消費の低迷を招き、GDPのマイナス成長をもたらしたからであり、最大の景気対策としてである。2つとも、重大な政策転換であるから国民に信を問うのが筋となり、同日選となる。

 

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