2016年2月10日 朝日の社説に「米国大統領選」「世界の難題、論戦を」

「保守の圧勝」

朝日の社説に「米国大統領選」「世界の難題、論戦を」が書かれている。

「圧倒的だった存在感に陰りが見えるのは確かである。だとしても、米国ほどグローバルな力を行使できる国はいまもない。あらゆる地域に関与することで繁栄を享受してきた米国は、その引きかえに国際秩序を支える責務も負っている。

その国の次期政権を担う人物に世界が注目するのも当然だ。しかし、1日に本格指導した大統領選の論戦が、その期待に応えているとは言いがたい。ポピュリズム的な人物に話題をさらわれ、具体的な政策論議に乏しく、中傷合戦がめだつ。中西部アイオワ州であった全米最初の党員集会でも、そんな人物が一定の支持を集めた。

世界にとっても米国にとっても憂慮すべき事態だ。米国の動向は米国だけのものではない。米国の有権者は、国際社会に重責をもつ国としての意識を忘れず、選挙に臨んでほしい。

大統領選では、2大政党である民主党と共和党が州ごとに党員集会や予備選を重ね、7月にそれぞれの候補者を指名する。11月の投票でオバマ大統領の後継者が決まる。

最初の州アイオワでは、共和党で保守強硬派のテッド・クルーズ上院議員がドナルド・トランプ氏を抑えて勝利した。民主党では、ヒラリー・クリントン前国務長官とバーニー・サンダース上院議員が接戦を演じた。

9日に予定されている次のニューハンプシャー州予備選ではトランプ氏とサンダース氏が優位に立つ。いずれも、外交や国際問題について経験は浅い。

もちろん、立場が異なる人物が広く論戦を交わすのはいいことだ。だが、とりわけ共和党の論議には、政策論というより、扇動というべきものさえある。

移民問題に絡み、『イスラム教徒の入国禁止』を唱えたり、イランとの核合意について『米国が世界最大のテロ支援国になる』と反対したりする極論だ。背景には、格差や治安悪化などへの国民の不安や怒りがあろう。それに乗じて溜飲を下げる過激な言動に走るようでは、この大国を率いる資格はない。

過激派組織『イスラム国』にどう対するか。中東の安定や難民危機の解決には何が必要か。中国とどう向き合うか。世界が米国と共有する難題こそ、論戦の主軸にしてほしい。

だれが次の大統領になっても米政治は引き続き、保守とリベラルとの深い分断に悩まされ続けることは確実だ。だが、米国抜きには21世紀の世界秩序は語れない。国内の対立を超えて、いかに世界とかかわるか。米国の自覚が問われている」。

社説の結語である「だれが次の大統領になっても米政治は引き続き、保守とリベラルとの深い分断に悩まされ続けることは確実だ」に異論がある。

米国大統領選の争点が「世界の警察官の位置」に戻るべきか、否かだからである。オバマ大統領のリベラル路線の継承の是非となるからだ。中国の脅威、ロシナの脅威、「イスラム国」の脅威を放置したのは、オバマ大統領の責任であるからだ。リベラル路線の失敗であり、保守路線の巻き返しとなる。

問題は、共和党の「トランプ旋風」、民主党の「サンダース旋風」の背景に、オバマ大統領のリベラル路線への国民の不信があることだ。米国民は「3つの脅威」と戦う強い大統領を求めている。保守派の台頭であり、第2のレーガンは誰かとなる。大統領選で保守とリベラルの深い分断はおわり、保守の圧勝となるが。

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