2016年1月14日 朝日に「税収上ぶれ、当てこむ首相」「軽減税率の財源に」

朝日に「税収上ぶれ、当てこむ首相」「軽減税率の財源に」が書かれている。

「昨年末の軽減税率をめぐる議論で先送りされた約1兆円の財源確保について、安倍晋三首相は12日の衆院予算委員会で、税収が増えた『上ぶれ』分を充てる可能性を表明した。他に巨額の財源を確保できるめどが立たないためだが、税収は景気の動向次第で大きく減ることもあるだけに、政権内からも異論が出ている。

<6000億円確保進まず>

『税収は(第2次安倍政権の発足から)3年間ずっと上ぶれている。企業の法人税、所得税も上がっていく中で経済全体が底上げされている。それをどう考えるか、経済財政諮問会議でも議論していく』

民主党の玉木雄一郎氏らが、軽減税率の導入で税収が目減りする分の財源をどう確保するかただしたのに対し、首相は上ぶれ分を充てることを検討する考えを示した。昨年末の与党税制改正大綱では、『2016年度末までに安定的な恒久財源を確保する』と先送りしており、めどが立っていない6千億円分を見つける必要があるためだ。

上ぶれ分の活用は一度、頓挫した経緯がある。自民党が『税収の上ぶれはいつまで続くのか』(谷垣禎一幹事長)と拒否したためだ。12日の予算委員会終了後、野党に示した政府統一見解でも『上ぶれは経済状況によっては下ぶれすることもあり、基本的に安定的な恒久財源と言えないと考える』と明記した。

消費増税を決めた12年の民主、自民、公明の3党合意でも、増え続ける社会保障の財源として安定的な税収が見込める消費税を充てることを決めている。軽減税率の適用で消費増税による税収は確実に減るため、代わりに安定した財源が必要となる。

それでも、首相が『議論をここで閉じてしまってはならない』(予算委での答弁)と主張し、上ぶれの活用に積極的な姿勢を示す背景には、ほかに財源が見当たらないという事情がある。

<成果アピール狙う>

政権は高所得者に対する所得税やたばこ税の増税も検討したが、世論の反対も予想され、財源としても不十分。さらに、消費税率を10%に上げた際の増収分の14兆円分は使途が決まっており、上ぶれ分以外に財源のめどが立っていない。

『アベノミクスは成功して税収は増え続ける』として、首相自ら経済運営への自信を示す狙いもある。公明幹部は『実現すれば年末の財源探しの議論はだいぶ楽になる』と歓迎している。

<下ぶれ懸念、閣内にも>

麻生太郎財務相はこの日の予算委で、『経済状況で税収が下ぶれすることもあるので、安定的な財源とは言えない』と述べ、上ぶれ分を軽減税率の財源とすることに慎重な考えを示した。

政府は16年度当初予算案で、国の税収をバブル景気時並みの57・6兆円、地方税収を41・9兆円の計99・5兆円と見積もる。第2次安倍政権が発足した12年度の税収実績と比べると、国と地方合わせて18・9兆円増える計算だ。12年度の当初の見積もりと比較すれば、首相が繰り返す『21兆円の税収増』になる。

ただ、これらすべてがアベノミクス成功の果実ではない。国の分の税収増のうち、7兆円近くは消費税収の増加、つまり消費税率を8%に引き上げた増税によるものだ。それを差し引くと、国の税収はリーマン・ショック前の07年度の水準と変わらない。法人税収は税率の引き下げなどもあり、07年度の実績(14・7兆円)より2兆円以上少ない。

<伸びるかは不透明>

そもそも、見込み通りの税収が得られるかが不透明だ。見積もりの土台となる名目成長率の見通しは約3%で民間予測(平均で2%程度)より高い。中国経済の停滞などの影響で国内景気が冷え込めば、税収が思うように伸びなくなる。実際、ここ30年で国税の税収の実績が当初見通しを下回ったのは12回あり、リーマン・ショックが起きた08年度は、税収実績が当初の見通しを9・2兆円も下回った」。

政府内で、軽減税率の6000億円の財源確保に外為特会の積立金活用が浮上している。積立金は約21兆円もあり、安倍政権発足以来進んだ円安・ドル高によって生じたアベノミクスの果実である。恒久財源であるからメドが立ったとなるが。安倍首相が財務省の抵抗を押し切れるか、である。

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