2013年8月1日

日経の「月曜経済観測」「参院選後の日本経済」に、長谷川閑史・経済同友会代表幹事が「改革実行なら展望拓ける」を述べている。

「小泉政権以来の長期・安定政権への基盤をかためた安倍晋三首相の経済運営のもとで、日本経済はどういう経路をたどるのか。規制改革など成長戦略は成果を出せるか。経済同友会の長谷川閑史代表幹事(武田薬品工業社長)に聞いた。

――参院選の結果をどう受け止めますか。
『衆参ねじれ解消にはプラスマイナス両面あるが、今は良い面を強調したい。困難な政治課題が山積する日本は、ねじれが改革を阻む方向にはたらいていたからだ。過去30年に登場した首相は18人。この間、米独の政治リーダーはともに少数だ。ある程度、安定した政権でなければリーダーが計画的に物事を前へ進めるのは難しい。もっとも現体制が長引くと政権党におごりが出る心配もある』
『低投票率は世論調査や都議選結果から趨勢は決まったとみた有権者が多かったのが一因だろう。野党側が有権者に訴える対立軸を出せなかったのも影響した』

――政権基盤の強化は日本経済にどういう効果をおよぼすでしょうか。
『アベノミクスの第一、第二の矢は展望を拓いた。この先、着実に成長軌道にのせるには、秋の臨時国会や来年の通常国会でどういう法律と予算を成立させ、実行に移すかが問われる。改革すべき課題は多岐にわたるが一挙には片づけられない。環太平洋経済連携協定(TPP)交渉に参加した時機でもあり、農業の競争力を高める具体策を実行するのが大切だ』

――株式・外国為替市場は動意がとぼしいです。
『市場は選挙結果を織りこんでいた。経済指標の好転がつづき、秋の国会で政策が停滞するリスクが小さいことを前提に、農業分野などこれまで手をつけられなかった改革が動けば、勢いはつづくとみている』

――消費税率の引き上げへの経済環境は整ったと。
『日本経済は1~3月期に続き4~6月期も高めの成長になったとみられ、自公民の3党合意にしたがえば増税にストップをかける選択はないと思う。首相の経済ブレーンである浜田宏一・米エール大名誉教授は慎重な意見をもっているが、法律をつくり替えてまで止めることだろうか』

――リスク要因は?
『ふたつある。まず企業が生産性を上げられるか。これには国際戦略特区を活用して日本をアジアでいちばん起業しやすい国にするのが効果的だ。ふたつめは総人口と生産年齢人口の減少だ。女性と元気な高齢者の労働参加をもっと促す策を実現させてほしい』

――中国経済の減速というリスクも出てきました。
『リーマン危機後の超大型の経済対策などで、不動産バブルが深刻だ。習近平指導部は政策を微修正している。欧州向けの輸出停滞やほかのアジア諸国にくらべた雇用コストの上昇という逆風はあるが、あの大国が7%台の成長を挙げるのなら<高度成長>はつづいているとみるのが自然だ』

――長期・安定政権だからこそ、すべき改革とは。
『アベノミクスはこれまでだれもできなかった経済政策だ。この勢いをかって人財立国へ向け、多様性を尊重する教育政策の転換をのぞみたい』」。

氏は、消費税率の引き上げへの経済環境は整ったと見ているが、29日の東京市場での日経平均株価468円の急落は冷水を浴びせている。円高が原因ではあるが、4月~6月期の成長が、高めではないのでは、との懸念である。市場は、消費増税NOのサインを送り始めたと思われる。

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