2015年10月26日 産経 主張「英国の対中接近」「価値共有に目をつむるのか」
「価値共有に目をつむるな」
産経の主張に「英国の対中接近」「価値共有に目をつむるのか」が書かれている。
「自由と民主主義の価値観を共有できないのみならず、海洋覇権の追求と人権抑圧を続けるような国との付き合い方なのだろうか。
先進7カ国(G7)の主要メンバーで米国の重要な同盟国である英国が、中国に急接近していることだ。習近平国家主席の公式訪問でみせた過剰な傾斜ぶりには、大きな懸念を抱かざるを得ない。
習氏の訪問中、両国は中国による総額400億ポンド(約7兆4千億円)の投資や貿易の契約に合意した。高速鉄道、液化天然ガス事業など多岐に及ぶが、目玉は中国製の新型原子炉導入など総額180億ポンドに上る原発関連の投資だ。
極めて問題なのは、英国のキャメロン政権には対中批判を封印する姿勢が目立ち、共通の価値観に立つ米国はじめ同盟国などへの考慮が欠けていることである。経済的実利の追及がそうさせているのだろうか。
キャメロン首相は中国の人権問題を会見で問われたのに対し、『経済関係が強固になれば、それ以外の問題でも率直な議論ができる』と直接の評価を避けた。
オバマ米大統領が9月下旬、習氏を国賓として迎えた際には、中国の海洋覇権追及や人権侵害を明確に批判した。違いは鮮明だ。
一方、習氏は『グローバルな包括的戦略パートナーシップを構築し、黄金時代を開く』と英国を引きつける自信をうかがわせた。
キャメロン政権は今年3月、米国の反対を承知で、中国が主導するアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加をG7で最初に表明して各国を驚かせた。
9月にはオズボーン財務相が、劣悪な人権状況にある中国西部の新疆ウイグル自治区を訪れた。
第二次大戦後、英国は米国ともども世界秩序の担い手として行動してきた。にもかかわらず、その秩序に挑戦する中国への急接近を図る姿勢は危うい。
南シナ海の岩礁を埋め立て、軍事拠点化を進める中国はアジアの周辺国に脅威を与えている。ロシアと並び、『力による現状変更』を目指す姿勢をあらわにしていることを忘れてはならない。
中国への過度の融和姿勢は、米英の同盟関係に亀裂を生じさせ、東アジアにおける中国の覇権主義を増長させることにもつながる。日本の国益も損なう事態として警戒を強めねばなるまい」。
主張の主旨である「価値共有に目つむるのか」は正論である。先進7カ国(G7)の主要メンバーであり米国の重要な同盟国である英国が、自由と民主主義の価値観を共有できない中国に急接近しているからである。
問題は、9月末の米中首脳会談の決裂によって米中新冷戦が始まっていることである。同盟国である英国も米中新冷戦に参加する責務があるのに、経済的実利を最優先し、中国の巧妙な分断戦略にからめ捕られたのである。AIIBへの参加の先頭を切ったのと同じである。経済的実利を先行させ、価値観共有に目をつむらせるのが、中国共産党主導のデタント戦略の本質である。オバマ政権がその本質に覚醒し、「自由通行作戦」を実施しようとする今、安倍政権は、同盟国として米中新冷戦に参加する責務を負っている。「価値共有に目をつむるな」と。