2015年10月13日 日経「消費増税時、軽減税率が軸」「自民税調会長、宮沢氏に交代」「対公明で首相決断」「成長戦略にも配慮」
日経に「消費増税時、軽減税率が軸」「自民税調会長、宮沢氏に交代」「対公明で首相決断」「成長戦略にも配慮」が書かれている。
「安倍晋三首相は10日、自民党税制調査会長に宮沢洋一前経済産業相を充てる意向を固めた。野田毅税調会長は最高顧問に退く。背景には消費税率10%時の負担軽減策を巡って難航する公明党との協議をてこ入れする狙いがあり、同党が主張する軽減税率を軸に検討が進む見通し。成長戦略の柱に税制改正を活用する首相の意向も反映している。
野田氏は消費税率10%への引き上げ時に、税と社会保障の共通番号(マイナンバー)カードを使って増税分を後から還付する財務省案を強く支持してきた。会長の交代で財務省案の見送りは決定的になった。政府・与党は今後、食料品などを買う時に、一定率を割り引く軽減税率の検討に入る。
首相と野田氏の間には溝があった。昨年秋、首相は2015年10月に予定した消費税率10%への引き上げを、17年4月に先送りする意向を固めたが、野田氏は『引き上げは当然だ』と反対。党幹部の中で唯一、首相に異を唱えた。
法人実効税率の引き下げ幅を巡っても、成長戦略の目玉として早期に20%台をめざす首相官邸と財源探しを優先する野田氏の隔たりは大きかった。官邸内に『大蔵省(現財務省)出身の野田氏は役所の言いなりだ』との不満がたまり、首相も『党税調が若返らないと進むものも進まない』とこぼしていた。
決定的になったのが消費増税時の負担軽減策を巡る公明党との協議の難航だ。野田氏は財務省案作りにかかわっていた。公明党は『買い物時の負担感がなくならない』と撤回を求め、与党税制協議会は暗礁に乗り上げた。公明党幹部は自民党幹部に『来夏の参院選を見据えて早く局面の転換を図るべきだ。自公の選挙協力にも響きかねないくらい厳しい状況だ』と野田氏の交代を促した。
それでも自民党幹部は野田氏の交代に否定的だった。ある党幹部は『年末にまとめる負担軽減策や与党税制改正大綱が間に合わなくなる』と懸念を表明。谷垣禎一幹事長も周囲に慎重な考えを伝えていた。首相周辺は税調会長の交代は『公明党との協議を加速するために必要な人事だった』と強調する。
宮沢氏も大蔵省出身で自民党きっての政策通。野田氏に近く、以前は法人税減税に慎重で消費増税派と目されていた。首相周辺は一時、林芳正前農相の起用も検討したが昨年、党税調幹部から経産相に転じ、法人実効税率の引き下げに協力した宮沢氏に白羽の矢を立てた。宮沢氏は『菅義偉官房長官に近い』(財務省幹部)という。
自民党税調幹部は『宮沢氏のもとで当面は軽減税率の検討を進めることになる。年末に間に合わないと消費増税時には一定額の給付金を配る簡素な給付措置を続けることになる』と語った」。
安倍晋三首相が、自民党税制調査会長を野田氏から宮沢氏に変えたのは、17年4月の10%消費税率引き上げ先送りへの布石である。軽減税率の消費増税事導入は財務省の抵抗によって間に合わず、公明党の参院選での選挙協力を確実にするには、消費税再増税の先送りしかないからである。ダブル選となるが。